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パリ最新情報「日本人シェフが3連覇の快挙を達成した、パテ・クルート選手権とは?」 Posted on 2022/12/12 Design Stories
12月5日、仏リヨンで開催された第13回パテ・クルート世界選手権にて、日本人シェフの塩見隆太郎氏(神戸北野ホテル)が見事チャンピオンに輝いた。
今回の優勝で日本勢は3連覇を達成したことになる。
一方、美食の街リヨンをベースとするフレンチシェフらは塩見氏に続き2位、3位を獲得した。
パテ・クルート(pâté-croûte、パテ・アン・クルートとも言う)とは、フランス伝統料理の一つで、肉のパテをパイ生地で包んだものを指す。
歴史も古く、もとは保存用にと考えられていた。
このパテ部分は、フランス食文化の根幹とも言える「シャルキュトリ(ハムやソーセージなどの加工肉)」にあたる。
そのためパテ・クルートはフレンチ・ガストロノミーの中心的要素、および“高度なノウハウが凝縮された料理”として、フランス人の間でもよく知られた一品となっている。
※優勝した塩見シェフのパテ・クルート
https://www.instagram.com/p/ClzIvC_oObf/?igshid=MDJmNzVkMjY%3D
出典:pâté-croûte実行委員会公式インスタグラムより
第13回世界選手権に集まったのは、ヨーロッパ大会、アメリカ大会、アジア大会、タヒチ大会から選出された14人のシェフによるパテ・クルートだ。
世界的パティシエのピエール・エルメ氏を審査委員長に迎え、ファルス(詰め物)の構成、味、全体の見た目、カットした断面の美しさなどを評価の基準とした。なお合計では200点満点となっている。
塩見シェフはこの度、フォアグラ、鴨肉、鶏肉、ジビエ、黒にんにく、栗などを使った「宝箱」という作品で審査員を魅了したほか、生地上部のデザインの美しさでも高評価を得たとのことだ。
※フランスの肉屋でも定番のパテ・クルート
この大会で日本人シェフがグランプリを獲得したことについて、審査員の一人で東京に拠点を置く仏人シェフ、クリストフ・ポコ氏は、「日本人の活躍には驚かないよ!」と語った。
ポコ氏によれば、「伝統的に彼らは完璧主義者で、質の高い仕事を好み、フランス料理を愛し敬意を払っている。
目立とうとするのではなく完璧さを求める、ただそれだけだ」といい、加えて塩見シェフの作品については焼き加減、厚み、味付けはもちろん、ジュレ部分とのバランスも良かった、と述べた。
パテ・クルートはこうして世界選手権が開かれるほど、フランス家庭料理に欠かせないメニューの一つとなっている。
見かける機会も多く、レストランに限らず、総菜店、肉屋、スーパーと、いつでもどこでも手に入れられるのが特徴だ。
しかし工程の複雑さや焼き加減の難しさから、今ではほとんどが工業製というのも確かである。
ということでリヨンのパテ・クルート世界選手権は、「作るのが難しい」とレッテルを貼られてしまったパテ・クルートの伝統を広めよう、と“発信の意味”を込めたのがスタートのきっかけだった。
また審査員の一人、クリストフ・マルギン氏によれば、「肉はハーブやスパイスとともにマリネする。
どんなお酒を用いてどんな味付けにするかを考え、そしてジュレを作って、パイに包んで、焼いて…と、フランス料理の基礎がここには詰まっている」とのこと。
そのため若い人たちにフランス料理のノウハウを一から説明するには、やはりパテ・クルートが最適の一品になるという。
最近のパリでは、多国籍料理がブームとなっている一方、田舎の伝統料理をメインとするガストロノミーが左岸方面にオープンし、再流行の兆しを見せている。
そんなガストロノミーでもたびたび登場するパテ・クルート、100人いれば100通りの作り方があるといい、奥深い料理としても大変有名だ。(こ)