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パリ最新情報「衛生パスの提示義務、始まる」  Posted on 2021/08/10 Design Stories  

8月9日、本日から、長距離の旅行、カフェ・レストラン・バーへの入店、映画館や美術館への入場に、衛生パスの提示が義務となる。
衛生パスというのは、主にワクチンを2回接種したという証明書(接種を終えるとQRコードが表示された証明書を渡される)、72時間以内に受けた膠原検査又はPCR検査の陰性証明、などのことを指す。
筆者は今日、レストランに行ったが、もちろん衛生パスの提示を求められた。
「お、始まったな」と、今日がその初日だったこと思い出した。

入口には「Anticovidアプリ(コロナ追跡機能などのアプリ)を携帯に入れておくと便利ですよ」と、そのアプリのダウンロード画面に飛べるQRコードが大きく印刷された紙が貼られている。
入口を開けるとすぐにサービススタッフが「衛生パスの提示をお願いします」と駆け寄ってくる。
筆者は2度のワクチン接種済みだったのでワクチン接種証明のQRコードを提示した。スタッフはタブレットでそれを読み取り、「ありがとう、どうぞ」と席へ案内してくれた。



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この作業、かなり手間がかかる。
店の方々に、同情的な気分になった。
そもそもフランスは、二回接種を終わらせていない人の方がまだ多い。レストランの集客がこれによって、下がると飲食業界では、噂されているようだ。
筆者の知り合いはワクチンを体質のせいで打てないために、レストランに行く前に、PCR検査を毎回受けているというのだ。
これを面倒くさいと思う人は、レストランやカフェに行かなくなる。
もし、飲食店で、この政府の方針を無視して、衛生パスを持ってない人間を接客すると、コントロールが入った場合、罰金がとられる。店側も、客の方にも・・・

実際、ロックダウンなどの制限によって損をした分を取り返そうと、「今年の夏はバカンスなしで店を開け働くぞ」と息巻いていたレストランやカフェが、この衛生パス提示義務のニュースを知った途端に「これでは開けていても割に合わない」とバカンス旅行に出ることを決めた店も多い。
開けると決めた飲食店も、「入口で衛生パスをチェックする係」として新たなスタッフの雇用を余儀なくされている。
「店の営業が厳しい時に、人件費が1人分増えるのは本当にキツい。開けるべきか否か、頭が痛い」と嘆くオーナーも多いのだとか。



パンデミック防止のため止むを得ないと分かってはいても、飲食店にとって、悩みの種である。

コロナが始まってから、飲食店業界はコロナ対策に振り回されてきた。
お持ち帰りのみと言われたらお持ち帰り用の器を大量購入し、メニューを手渡ししてはダメだと言われたらデジタルのメニューを作成し、テラス席のみ開けていいと言われたらテラス席をデザインし、工事費を負担して、路上にテラス席を設置した。
取り戻せる利益の保証は何もないのに、無駄な出費だけがかさんでいく。

この衛生パスの提示義務は、少なくとも11月15日まで続く。未だ嵐吹き荒れるフランスの飲食業界、晴れ間が見えるのはいつのことか。(尾)

パリ最新情報「衛生パスの提示義務、始まる」 

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