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パリ最新情報「衛生パスポート導入から2か月、フランスの今」 Posted on 2021/10/07 Design Stories  

フランス全土で7月21日から始まった「衛生パスポート」(PCR陰性証明もしくは、ワクチン2回接種証明、治癒証明)提示の義務化から、すでに2か月が経過した。

カフェやレストランを含む、50人以上が集まる施設では衛生パスポートを所持していない者(18歳以上の成人)は原則として入場を拒否されるというものであるが、9月30日からはこれに12歳~17歳の未成年も追加された。

バカンス前の急な決定だったため、当初は調整がうまくいかなかった部分もあったものの、「チェックする」側の施設はどこも淡々と任務を遂行。現在では衛生パスポートの提出義務がすっかり生活のベースとなった。

厳しいロックダウンで大ダメージを受けた世界一の観光地・パリであったが、ワクチン接種の人口が増えたことで徐々に回復へ向かっているようだ。

現在、フランスでは成人の88%が少なくとも1回のワクチン接種を終えている。
9月13日からは65歳以上の高齢者へのワクチン3回目接種が公式にスタートし、9月15日からは罰則として、ワクチン未接種の医療従事者への職務停止(無給)が遂行された。

希望接種を原則とするフランスで例外的に義務接種となったのは、広義の医療従事者(事務職含む)、開業医および在宅介護・ヘルパー、消防士など、数にして270万人。
ヴェラン保健相は9月16日以降、全国で約3千人が停職になったと明かした。

医療従事者のワクチン義務化および、衛生パスポートに対する反対デモは未だ全国各地で行われているが、フランス政府は「これも想定内」といった様子でまったくひるむ姿を見せていない。

パリ最新情報「衛生パスポート導入から2か月、フランスの今」



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さらにフランス政府は現在、衛生パスポートの提示義務の期限を、当初予定していた11月15日以降よりさらに延期する閣議を行っていると発表した。再度のロックダウンや商店閉鎖を防ぐためとしているが、もしこれが実現すれば少なくとも2022年の夏まで延長される可能性が出てきたというのだ。

しかしフランスは2022年の4月に大統領選挙を控えている。衛生パスポートがその頃まで継続されれば国民の投票に影響が出るとして、政府は決定に慎重な姿勢を見せている。

衛生パスポートが導入されてから2か月たった今、フランス保健相の統計によれば、8月にかけて増えていた入院患者数や新規感染者が大幅に減少したという。
そして今、フランスでコロナ対策として盛んに議論されているのが「3回目のワクチン接種」についてである。

10月3日にはフランスの公共放送『franeinfo』のインタビューで、疫学者のルノー・ピアロー氏は「私たちを守るのはワクチンでしかない。私たちは3回目の接種を高齢者から始めたが、ウイルスに感染したくない場合は、最終的には全人口に3回のワクチンを施す必要がある」と答えた。

今回、フランスが「賭け」に出た衛生パスポートであったが、義務付けの効果は大きかった。刻々と変わる未経験の状況に対して政府は大胆に動き、国民も必死についていった。

何が最も効果的な対策であるかは、各国にとって常に手探り状態である。そのなかで先陣を切って新たな策を打ち出すことに、フランスは躊躇が無いように見えた。多くの反発を横目で見ながら、2021年の終盤にはどういった決断が下されるのか。衛生パスポートの期間延長、3度目のワクチン接種など、今後の動きに注視していきたい。(オ)

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