欧州最新情報

パリ最新情報「『汚いパリ』の汚名返上へ!2022年から始まる、街を綺麗にする200のプロジェクト」 Posted on 2021/12/29 Design Stories  

美食の街、芸術の都、花の都・・・世界一の観光都市、パリはこうして華やかに形容されることが多い。
しかし同時に、汚い、地下鉄が臭い、タバコのポイ捨てが多い、といったネガティブな意見も声高に指摘されている。

地区によって雲泥の差はあるものの、ポイ捨てされるタバコの数は毎日1000万本にも及び、路上に放置されるベッドのマットレスや廃材なども後を絶たない。
「犬の忘れ物」に関しては放置すると罰金が取られてしまうため、パリ市内ではだいぶ改善された。しかし、郊外に行くとほとんど拾われていないのが現実だ。
「左足で踏むとラッキーなことが起こる」と、フランス人のあいだでは皮肉めいたジョークも飛び交っているが、それよりも前に個人の意識改革が必要なのではないだろうか。

パリ最新情報「『汚いパリ』の汚名返上へ!2022年から始まる、街を綺麗にする200のプロジェクト」

地球カレッジ

パリのアンヌ・イダルゴ市長は、就任の2014年より市の緑化・美化運動に力を入れてきた。しかし、新型コロナの影響でパリの清掃人員は例年の1割ほど減少。その結果、パリの街は汚さを増してしまった。
今年7月には約300人ほどがパリ市庁舎前に集まり、「汚いパリ」と書かれたプラカードを持って抗議デモを行ったほどだ。

そんな汚名を挽回するため、パリ市は年末に立ち上がった。
12月17日に閉会したパリ議会で、2022年から本格的な「パリ美化計画」が始まることが決まったのである。
これまで清掃に多額の予算を投じてきたパリ市だが、それがさらに上乗せされ、総額で過去最高の16.5億ユーロ(約2兆円)の投入が発表された。

パリ最新情報「『汚いパリ』の汚名返上へ!2022年から始まる、街を綺麗にする200のプロジェクト」



その内容はかなり大規模なもので、市内200か所にも及ぶ公共スペースの整備・清掃が行われる。
なかには老朽化したポン・デザール(パリ1区と6区を結ぶセーヌ川の橋)の補修、サンシュルピス教会やサンジェルマンデプレ教会の改修工事、レピュブリック広場の石畳の強化などが含まれるという。

また、セーヌ川沿いには新しいゴミ箱が設置されるほか、歩道、舗装、庭園、外灯、スポーツセンター、学校などは特にメンテナンスが強化される。
現在、パリ市の清掃員の数は5000人強。来年には人員をさらに増やし、落書きやポスターを高圧の熱湯ではがす清掃車も増設する予定だ。

また、パリ市では「Dans ma rue」という美化アプリケーションも活用している。
これは、一般市民が写真付きでパリの汚い場所をアプリ内で通報すれば、直ちに清掃員が出動して解決するという画期的なものだ。今後はそういった行政&市民のタッグを一層強化するという。

実は、「汚いパリ」に激怒しているのは観光客ではなく、紛れもない地元パリ市民。
多くの人が街を綺麗にしようと心がけているものの、一部の心無いパリジャンがゴミを捨ててしまうおかげで、イタチごっことなっているのである。

パリ最新情報「『汚いパリ』の汚名返上へ!2022年から始まる、街を綺麗にする200のプロジェクト」



今回、アンヌ・イダルゴ市長がここまで大規模な決断を下した背景にはもちろん2024年のパリ五輪、そして来年の大統領選出馬がある。
しかし一番の起因となったのは、パリ住民のあいだで秘かに広がるTwitterのハッシュタグ、「#saccageparis(荒らされたパリ)」という市長への中傷キャンペーンに対抗するものだった。

イダルゴ市長は以前から「文明都市において、街を綺麗に保つのは全市民の責任だ」と指摘してきた。それでもなかなか解決しないパリのゴミ問題、そして一部の住民からの中傷をここで一刀両断する。
2022年からは大規模予算の投入だけでなく、考え方や習慣を変えるよう市民に啓蒙活動を行い、本質的なパリの美化を目指すこととなった。

CO2の削減を目指した自転車利用、高まるエコ意識。
どんどん前へ進むパリだからこそ、このゴミ問題を後回しにしてはいけない。世界から旅行客が戻ってくる前に、少しでも改善していることを願う。(内)

自分流×帝京大学