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パリ最新情報「生活費の高い都市ランキング、パリは第2位。そして止まらない30代のパリ脱出」 Posted on 2021/12/22 Design Stories
12月初旬、イギリスの週刊誌「エコノミスト」の発表で、パリが「2021年世界で最も生活費の高い都市ランキング」の第2位となったことが明らかになった。
このランキングは毎年、「エコノミスト」が160項目の消費財とサービスの価格を調査し発表しているもので、食料品、家賃、衣料品、交通費、光熱費など日々の生活と余暇の統計に基づく。
昨年の同調査では1位だったパリだが、今年の首位の座はイスラエルのテルアビブとなった。これは、イスラエルの大都市がテルアビブに一極集中していること、通貨シェケルの急上昇と食料品や燃料費の値上がりが要因になったという。
ちなみに、3位はシンガポール、4位にスイスのチューリヒ、5位に香港、日本の大阪市が10位にランクインしている。
パリに注目すると、ガソリンは世界で最も高く、1リットルあたり1.56ユーロ(約206円)。主食のパンも10月に値上がりし過去最高値となり、不動産価格の高さも指摘されている。
逆に、世界最安値の1位としてワインが挙げられたが、いずれにしても納得のいく結果となった。
パリの物価の高さは有名だ。それなりの所で外食をしようものなら、2人で100ユーロ近く(約13000円)はかかってしまうので、ほとんどの人が自炊で切り盛りしている。
女性の美容院代はカットだけで50ユーロ強(約6500円)、洗濯用洗剤などは8ユーロ前後(約1080円)もしてしまう。
それに加え、高いアパルトマン代、高額な税金と容赦なく請求が来るので、パリ中心部で暮らす人にとってはストレスの負荷がかなり大きい。
今、そんなパリでは30代の「パリ離れ」が加速しているという。
結婚し家族が増えたため首都圏から郊外へ移る、というのは世界の各都市で聞く話だが、パリの場合は3度のロックダウンが一番の大きな理由だ。
パリ公証人議会が発表したレポートによると、パリ、イル=ド=フランス首都圏の中古物件の売買件数は2020年度、アパルトマンと一軒家、共に前年比で12%も減少した。
年代としては、30代が特に顕著だという。
リモートワークが増えたこと、万が一離職しても仕事が見つかる年齢であること、子供が幼いうちに自然に触れさせてあげたい、庭付きの広い家に住みたい、などなど、ライフイベントの多い30代ならではの理由が挙がった。
では、パリを離れた30代はどこへ向かうのか?その行き先は、やはり海沿いのようだ。
ブルゴーニュ地方のヨンヌ県では、不動産購入者のうち、27%が直前までパリ、もしくはイル=ド=フランス首都圏に住んでいた人であったという。
また、ノルマンディー地方のウール県やオルヌ県でも、購入者のうち20%以上が首都圏からの転居だったことが報告されている。
他にも、家族を持つ30代にはボルドーやトゥールーズ、リヨンといった文化都市が人気とのことだ。
パリから150キロ圏内に住む人のなかには、パリとの2拠点生活を選択する人もいる。
たまに寝泊りできるだけの小さなアパートをパリに持ち、家族と住む家は自然に囲まれた田舎に構える、というのが不動産市場の新しいトレンドのようだ。
しかし、2024年にはパリ五輪が、2030年には「グランパリ計画」と呼ばれるパリ拡張計画も立てられている。
30代の働き盛り世代から去られ、物価の高さでマイナスイメージを持たれがちなパリだが、「芸術と文化の都」「サステイナブルな街」としての位置は揺るぎないままだ。
コロナ禍にあって変化の兆しを見せる人の動きと、都市政策に改革が起きつつあるパリの今。今後の方策・展開に注視していきたい。(る)