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パリ最新情報「夏のパリで再び増えるスリと詐欺。観光客の増加でパリ警察も動く」 Posted on 2022/08/05 Design Stories  

 
8月に入り、パリの街は静かになった。
本格的なバカンスシーズンに入ったこともあり、地元パリジャンの多くは今、首都を離れ地方や国外で過ごしている。
オフィス街は閑散としており、数週間ほどクローズするカフェやレストランも少なくない。
しかし、世界各国からの観光客はそんな夏のパリを例年以上に活気づけている。

パリ市役所の発表によると、2022年1月から5月までの間にパリを訪れた観光客はおよそ1210万人で、2021年の同時期の約3倍に上るという。
その勢いは夏も止まらず、主にアメリカやEU諸国からの旅行客でパリの名所は大変な賑いを見せている。
観光名所の中でもシャンゼリゼ大通りは特に人出が多く、ヨーロッパの主要都市では、シャンゼリゼがロックダウン後いちばんの回復を見せているということだ。
 

パリ最新情報「夏のパリで再び増えるスリと詐欺。観光客の増加でパリ警察も動く」



 
ところが観光客の増加に伴い、彼らを狙ったスリ集団も最近では増えている。
パリは傷害事件などの暴力的な犯罪は比較的少ないものの(それでも日本に比べれば多い)、スリや詐欺といった軽犯罪が本当に多い。
不名誉なことに、パリはスリの被害が多いヨーロッパ都市のトップ5に常にランクインしているという統計もある。

彼らが狙うものは何か。そのナンバーワンは、財布ではなくスマートフォンであるという。
最新のiPhoneなどは最も価値があり転売しやすいので、パリではいちばん多く盗まれているとのことだ。
被害件数の多い場所は、エッフェル塔、ノートルダム大聖堂、モンマルトル、シャンゼリゼ付近などの主要観光地。
 

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また最近では地下鉄駅の構内、マルシェ、ATM付近、さらに美術館や博物館前にたむろするスリもコロナ前より増えている。
彼らの手口はダイレクトに物品を奪うほか、道を尋ねたり、募金や署名を募るふりをして少人数で近づいてくるというものだ。
フランスの法律では未成年者を逮捕することがほぼ不可能なため、スリの大半が12歳から16歳の女性となっていることにも注意したい。
 

パリ最新情報「夏のパリで再び増えるスリと詐欺。観光客の増加でパリ警察も動く」



 
また詐欺事件も多い。コロナ禍を経て、オンライン決済の機会は非常に増えた。
フランスのネット詐欺被害額はこの2年間で10億ユーロ以上だとも言われている。
首都パリで横行しているネット詐欺は多岐にわたるのだが、最近では犬や猫のブリーダー詐欺、不動産契約に伴う詐欺、そして「健康保険証の更新」に伴う詐欺の件数が増えている。

特に「健康保険証の更新」に伴う詐欺は今年に入って多く報告されている。
犯人の手口は、まずSMSでフランス健康保険公庫(Ameli)に似た偽サイトに誘導し、そこから個人情報の入力を巧妙に促し現金を振り込ませる、というものだ。
いずれもフランス語を母国語としない人、もしくは高齢者が被害にあうケースが多い。
なおフランスの銀行側は、このようなケースの場合「顧客側に用心が足りなかった」との理由で返済には応じてないため気を付ける必要がある。

このような軽犯罪の増加を受け、パリ警察は2021年10月から路上販売やスリを防ぐための特別組織を設けている。
これまでには合計34回の大規模作戦が行われ、6月23日から7月3日までの10日間では逮捕者113人、罰金185人、立ち退き者2,105人という、まさに徹底弾圧を実施した。

それでも社会不安が大きくなればなるほどスリや詐欺が増えるため、今年フランスに滞在する人は特に用心した方が良いかもしれない。
在住者でも慣れた頃に被害にあうといったケースが考えられるので、屋外でのスマートフォンの取扱いには十分注意したい。(オ)
 

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