欧州最新情報

パリ最新情報「パリ五輪開会式、“会場の代替案は2つ”と発表。テロの危険性が高まった場合に」 Posted on 2024/04/16 Design Stories  

 
オリンピック開幕100日前となった4月15日、フランスのマクロン大統領から、「テロの脅威があった場合における開会式の代替案」について初めて言及があった。
マクロン大統領によれば、代替となる会場の候補は2つあり、その場合はトロカデロ広場(パリ16区)に限定するか、フランス競技場(Stade de France、パリ郊外)で行われる可能性があるという。
 



パリ最新情報「パリ五輪開会式、“会場の代替案は2つ”と発表。テロの危険性が高まった場合に」

 
7月26日のパリ五輪開会式は、オリンピック史上初となる青空の下、セーヌ川沿いで開催される予定だ。
これについてはマクロン大統領も、「予定通りセーヌ川で開催されることを何よりも望んでいる」と主張している。そのためこの日に言及された2つの代替案は、テロの危険性が確認できた場合の”予備シナリオ “であるということだ。
ただ、それがいつ決定されるのか、どういった判断基準なのかは現段階では明かされていない。15日の発表では、「我々はリアルタイムでリスクを分析する」と述べられたのみだった。

マクロン大統領およびパリ五輪委員会はこれまで、「プランB」「プランC」と呼ばれる(開会式)会場の代替案について、明言することを避けていた。よって、具体的な場所が挙げられたのは今回が初めてとなる。
また発表があった15日、マクロン大統領は現在の中東情勢についても触れており、大会期間中の五輪休戦に向けて「全力を尽くす」とコメントした。

なおセーヌ川での開会式を巡っては、セキュリティ対策として観客を当初の60万人から32万人(無料観覧席:22万2000人、有料観覧席:10万人)に減らし、該当エリアへの立ち入りを1週間前から制限することが決まっている。
 

パリ最新情報「パリ五輪開会式、“会場の代替案は2つ”と発表。テロの危険性が高まった場合に」

※2021年、トロカデロ広場で中継された東京五輪閉会式の様子。この日は約6500人が集まった。



 
このように問題が山積みのパリ五輪に対して、フランス国民も動揺の色を隠せない。
事実、Ifop(フランス世論研究所)の調査によると、フランス人の53%がオリンピックの組織について心配していると答えたそうだ。
実際に15日に発表された会場代替案については、SNS上で「テロの脅威は今に始まったことではない」「開会式は失敗するのではないか?」などと否定的なコメントが相次いだ。

大会期間中に懸念されているもうひとつの問題に、ストライキがある。
フランス最大の労働組合(CGT)および、いくつかの組織(エッフェル塔など)は五輪期間中にストライキを決行すると警告しており、マクロン政権との対決姿勢をあらわにしている。
最近では五輪のメダルを製造するラ・モネ・ド・パリの従業員たちが、賃金条件の改善を求めてストライキを決行し、騒ぎを起こしたこともあった。

一方でマクロン大統領は、スト関係者を「信頼しており、彼らの責任感を信じている」と述べ、五輪期間中に働いた公務員には臨時ボーナスを支給するなど、打開策を発表している。しかしストライキの計画は依然として残っているため、すべてが五輪前に廃止されるかどうかは「ぎりぎりまで分からない」といった状態だ。
 



パリ最新情報「パリ五輪開会式、“会場の代替案は2つ”と発表。テロの危険性が高まった場合に」

 
パリ五輪を巡る問題はこのように、フランスの社会問題を色濃く反映している。
開催が近づくにつれ、政府と一般市民の摩擦も大きくなっているという印象だ。しかし一番の脅威はテロであることに変わりはない。緊迫する国際情勢もあり、フランス政府の早めの決断が待たれる。(内)
 

自分流×帝京大学