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パリ最新情報「雰囲気、交通、治安ー。開催2週目の五輪、パリの街はどう変わったか」 Posted on 2024/08/05 Design Stories  

 
開催2週目に入ったパリオリンピック。連日のように熱戦が繰り広げられているパリでは、五輪観光客も増え、以前の活気が戻りつつある。
 

パリ最新情報「雰囲気、交通、治安ー。開催2週目の五輪、パリの街はどう変わったか」

※パリのデパート、ラ・サマリテーヌに展示されている実物のメダル。



 
開催前の殺気立った空気は、もうパリにない。
代わってあるのは人々の熱狂と興奮、そして例外的な治安の良さだ。フランス人がこれほどオリンピックに熱狂するとは意外だったが、これは7月28日、競泳のレオン・マルシャン仏選手が五輪新記録で金メダルを取ったことが発端だった。
以来フランスでは、1924年以来のメダルラッシュが続いている。
 

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※ラグビー、閉会式等の会場であるスタッド・ド・フランス。

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※フェンシング、テコンドーの会場、グラン・パレ。どの会場でも外に漏れるほどの大歓声が。



 
治安の良さというのは、パリ市内の厳重な警備が、犯罪抑止力につながっているため。
数万人体制の警備は今も続いており、街を歩けば大勢の警官・警察車両とすれ違う。開会式前は異様だった光景も、今では逆に安心感を抱いてしまうほどだ。

なお、フランス内務省は「オリンピック開始以来、パリ首都圏で200人の逮捕者が出た」と発表している。期間中に大きな事件が起きていないのは、こうした抑止力が働いているためだと言える。
※開会式の数時間前にTGV(フランス高速鉄道)が破壊行為を受けたことで懸念が高まったが、容疑者はすでに拘束されている。
 

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※車通りがなくなり、歩行者天国になったパリ、マドレーヌ寺院前。

 
パリ市のオリンピック担当代理ピエール・ラバダン氏によれば、当初は懐疑的だったパリ市民も、白熱するオリンピックに参加するために戻ってきているという。彼らの多くは、予定より早めにバカンスを切り上げたそうだ。
 

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※中心部のカフェ・レストランでも活気が戻りつつある。



 
それを象徴するかのように、8月3日に行われた自転車ロードレース競技(男子273km)では、沿道に約50万人の観戦客が集まった。
観戦は無料で、もちろん予約も要らない。そのため沿道では「一生に一度だから」「無料で自由だから・・・」という観客の声が(仏語で)聞こえていた。
 

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※ルーブル美術館、オペラ座といったパリの名所を走り抜けた自転車ロードレース。このあと選手はモンマルトルに向かった。

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※8月3日、モンマルトルの街。この日は今大会最高の観客数だった。©Paris 2024



 
パリオリンピックは「開かれた大会」がコンセプトなだけに、屋外での開催が多い。しかしこれには、素晴らしいところと大変なところ、両方が浮き彫りになった印象を受ける。

問題点の一つは、やはり暑さへの対策だろう。
パリの夏は、朝晩は過ごしやすくても、日中は日によって猛烈な暑さに見舞われる。
エアコンがないことは選手村のニュースでも取り沙汰されていたが、一般の公共交通機関(一部を除いてエアコンが完備されていない)でも、早急な対策が必要不可欠だと思った。
 

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※シャンゼリゼ大通りにある無料の水汲み場「フォンテーヌ」。

 
またパリでは、無料でマイボトルに水を汲める「フォンテーヌ」がいくつか用意されている。ところがその多くは、歩いていて偶然に発見する、というものだ。
今大会、競技会場における“使い捨てペットボトルの廃止”は確かに良案で、国内外からの評判も良い。
ただ会場の外でも、パリ市の取り組みを積極的に紹介できればよかったと思う。無料フォンテーヌについて知っているのは市民と一部の旅行者だけだったので、もっと情報が共有できれば、ゴミがさらに削減できたのではないだろうか。
 

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※競技会場の飲食販売店。バゲットサンドイッチやパスタサラダ等のメニューがあった。ペットボトルはゼロで、洗って繰り返し使えるカップが用意されていた。



 
一方、地下鉄・電車の動きはスムーズで、今のところ大きな問題は報告されていない。車移動が不便なことを除けば、乗客も少なく「今がいちばん良い」とさえ言われている。
 

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※現在パリでもっとも人気のある、気球の聖火台(写真奥)。日暮れには60mの高さに浮かぶ。パリ市長はオリンピック後も残すことを検討している。

 
このように、オリンピック2週目に入ったパリは、開催前とは真逆の雰囲気に包まれている。
フランス人選手の活躍がそうさせているのは間違いないが、その逆も然りで、「観客の声援が励みになった」と、金メダリストのアントワーヌ・デュポン選手(7人制ラグビー)は答えている。(大)
 

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