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パリ最新情報「興奮と静寂の2つに包まれるパリ。競技がスタートした街の今」 Posted on 2024/07/29 Design Stories
100年ぶりのオリンピックが開催されているパリでは、競技観戦の興奮と、街の静けさが同時に見られる、珍しい光景が広がっている。
パリ2024大会のスローガンは、「Games Wide Open(広く開かれた大会)」だ。
従来はスタジアム内で行われる競技を街なかで開催することで、みなが参加できるオリンピックを目指している。
実際に開会式翌日の27日には、パリ中心部のサン=ジェルマン大通りが自転車ロードレース(個人・タイムトライアル)の舞台になった。
アスリートたちはブティックやカフェが立ち並ぶ大通りを、猛スピードで駆け抜けていく。沿道にはさまざまな国旗が掲げられ、集まったファンから大きな歓声が上がっていた。
また、アパルトマンの窓辺には直接観戦を楽しむパリジャンの姿が。開会式でも同じ光景が見られたが、これも「パリならでは」と感じた。
しかし観戦ポイントから少し離れると、街はぐっと静かになる。
五輪観光客はいるものの、地元パリ市民はほとんどいない。スーパーでもブーランジュリーでも食品が残されたままで、日常の風景がストップしているような印象を受けた。
パリの中心部も、競技開催のために広範囲が車両通行止めになっている。地下鉄では座る機会が増えた上に、ボランティアの制服を着た五輪スタッフや、外国人の乗客を多く見かける。
ホテルなどは場所によるというが、28日の仏紙ル・パリジャンによれば、オリンピック開催期間中、中心部の宿泊施設で満室になっているのは、わずか12%に留まっているということだ。(主な理由は値段)
※歩行者天国になったパリ6区の通り。普段はバスと車が行き交う道。
開会式に向けて設定されたセーヌ川沿いの入場制限は、翌日にやっと解除された。今ではセーヌ川の橋を自由に渡ることができる。
しかしバリケードの解体作業が続いているため、街並みがもと通りになるにはもう少しの時間がかかりそうだ。一部の橋は競技開催により、いまだ通行止めになっている。
もうひとつ気になったのは、セーヌ川沿いのブキニストだろうか。
一時はオリンピック中に撤去が命じられるも、権利を主張し、大統領が一転して営業を許可したとして世界的なニュースになった。
当時は店主らも喜んだというが、実はポン・ヌフ橋付近を除いては、グリーンのBOXが今も閉じられたままになっている。
※観客席の解体が続くセーヌ川沿い。撮影した場所の両側にはブキ二ストがあったが、BOXは閉じられていた。
事実、7月18日から26日まで続いた入場制限の期間中、開いていたブキニストはたった一件だけだったという。
こうした状況についてパリ・ブキニスト会長は、「規制の初日と2日目に出店した人もいましたが、岸壁を通る人がまったくいないのを見て、みな諦めてパリを離れました」と述べている。
期間は店主によって異なるが、27日の規制解除後すぐに戻ってきたブキニストはあまりいないそうだ。
※セーヌ川沿いのカフェでは、英語を中心にさまざまな言語が飛び交っている。
パリの街はこうして、静けさと興奮、2つの空気に包まれている。
もちろん競技会場や会場付近、有名な観光スポットはこれまで以上に賑わっている。しかしそのほかは例年よりひっそりしていて、パトカーの音しか聴こえないという場所があった。
厳しすぎたあの入場制限が、市民のパリ脱出を加速させていたのかもしれない。
※一方で、チュイルリー庭園の聖火台前にはたくさんの人が集まっている。夜間は高さ60mの上空に浮かぶため、まったく人が途切れない。
開会式が終わったあとも、パリの警備は毎日3万5千人体制で行われている。
26日以降は少し緊張がとけたという印象を受けるが、中心部の活気が戻るにはまだまだ時間がかかりそうだ。(大)