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パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」 Posted on 2024/07/23 Design Stories  

 
26日に迫る五輪開会式に向けて、パリは厳戒態勢に入っている。
一週間前の18日からは、セーヌ川沿いのほぼ全域が「テロ警戒区域(SILT)」となり、立ち入るためにはどんな人であっても許可証と身分証の2つを提示しなくてはならない。
しかし立ち入り制限が始まってから5日のあいだには、住民・観光客をめぐるさまざまなトラブルが勃発。19日にはパリの飲食店連盟がプレスリリースを発表し、「前例のない客数の減少」を訴えた。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※閑散とするパリ中心部。



 
「補助金はいらない、働きたい」「一日何千ユーロも売り上げが減っている」
と、カフェ・レストランオーナーが嘆く姿を、現地フランスのTV番組は毎日のように報道している。
とくに被害を受けているのは、テロ警戒区域が敷かれた内部と周辺の店だ。
7月は一年でもいちばんの売上だというが、現在は平均で30%、もっとも大きな影響を受けた店では70%も落ち込んでいるという。なかには採算が取れず、オリンピックが終わるまで閉店を決断したところもある。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※パリ市とフランス政府はケースバイケースで補償を約束しているが、店主らの懸念は消えていない。



 
ノートルダム大聖堂のあるシテ島、隣のサン・ルイ島はその最たる例だ。
普段は風光明媚なこの場所も、厳しい立ち入り制限のために観光客が激減。歩いているのは一握りの住民か観光客、警官のみである。
一方サン・ルイ島ではほとんどのカフェが閉店しており、薬局とスーパーマーケット、そして一部の専門店を除いてはどこもオープンしていない。

7月8月のパリには、バカンスに出かける住民と引き換えに、多くの観光客がやってくる。
ところが、パリの観光名所はほとんどが「グレーゾーン」と呼ばれるテロ警戒区域内に位置している。開いているレストランがあったとしても、何万ものバリケードに囲まれたテラス席で飲食をしなくてはならない。
残っているパリ住民に対しても「テレワーク推奨」という圧力がかかっているため、必要な人以外は“街を出歩かない”というわけだ。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※写真左側がグレーゾーン地区。この光景がパリ中心部の10kmにわたって続いている。



 
さらに7月20日からは、パリ首都圏で公共交通機関の料金が約2倍に。前日には慌ててパスをチャージするという市民の姿があちこちで見られた。※パラリンピックが終了する9月8日まで続く。
地下鉄の切符は一枚4ユーロ(約680円)もするので、周囲のフランス人たちは「この時期は無理に行動しない」とみな口にしている。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※バリケードに近づくとすぐさま「QRコードは?」と聞かれる今のパリ。

 
影響は飲食店だけに留まらず、ゴミ収集車や食品デリバリー、介護サービスにまで及んでいる。
通常、これらの移動車は制限区域内でも許可されているのだが、検問に手間取られ、普段は15分で行けるところが2〜3時間、もしくはそれ以上の時間がかかってしまうのだ。
また先週末にはパリでも気温が上がり、許可証(スマホ画面のQRコード)が日差しのせいで判読不能になるという事態が生じた。これが原因で立ち入りを拒否された人もいたという。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※Google Mapには立ち入り禁止のマークがびっしりと表示される。



 
警官や憲兵が目を光らせているものの、周囲のゴミ箱からはゴミがあふれ出たりもしている。現在のパリはまさに、ロックダウン時以上にカオスといった状態だ。
なお観戦予定のある方、観光予定の方にはQRコードの誤作動を防ぐため、チケット等をプリントアウトして携帯することをお勧めしたい。
 

パリ最新情報「セーヌ川沿いの立ち入り制限が多大な影響をもたらす。大混乱のパリ中心部」

※タクシーも自転車も、すべての人が検問の対象に。

 
肝心の開会式当日だが、22日(月)にはフランスの運輸大臣からパリ市民に向けて、「車利用は最後の手段として」「もし車でバカンスに出かけるのであれば、午前10時までに出発を」と異例の呼びかけがあった。首都圏の交通が麻痺することを懸念したかたちだ。

当日はパリの人口約210万人に対して、32万人ほどの観客が開会式に動員されるという。
しかし、見せ方にこだわり、大きな賭けに出たフランスが犠牲にしたものは大きい。
最新の報道では、開会式の翌日27日には歩行者と自転車の規制が緩和されるとあったが、自動車は引き続きいたるところで交通規制が敷かれるので、外出予定のある方は十分に注意したい。(大)
 

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