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パリ最新情報「セーヌ川沿いでテロ警戒区域の設置スタート、五輪開会式に向けて 」 Posted on 2024/07/19 Design Stories
7月18日(木)午前5時、パリ五輪の開会式を前に、セーヌ川沿いで大規模な立ち入り制限が始まった。
制限されている区域はセーヌ川沿いとパリ中心部、直径にしておよそ10キロ。なお、警備がもっとも厳しいセーヌ川沿い(グレーゾーン)に立ち入るためには、住民も就労者も観光客も、あらかじめダウンロードした許可証(QRコード)と身分証を提示しなくてはならない。
※グレーゾーン:SILT(シルト、テロ警戒区域)。立ち入りがもっとも厳しく制限されているエリア。レッドゾーン:一般車両通行止め。自転車、歩行者は許可証が不要。いずれも7月26日13時まで適用。Source : Préfecture de Paris
今のところ歩行者であれば、レッドゾーンには問題なく立ち入ることができる。ただグレーゾーン付近にはおびただしいほどの柵が設置されており、当然のことながら、許可証なしではまったく入ることができない。
警官の数も非常に多く、仏内務省の発表によれば、グレーゾーン・レッドゾーン合わせて約4万5000人の治安部隊が出動しているという。
※18日午前、レッドゾーンとグレーゾーンの境界線。奥にセーヌ川とポン・ヌフ橋。
「SILT(シルト)」と呼ばれるグレーゾーンに入ることができるのは、住民や許可された就労者・医療関係者、ホテルなどを予約した観光客のみだ。
しかしこの区域にはエッフェル塔、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂といった、パリを代表するモニュメントがある。
美術館にはチケットの提示で専用口から入場できるというが、初日のルーブル美術館前では、特別に設けられた入り口に長蛇の列ができていた。
※ルーブル美術館、東側に設けられた入り口。
※ルーブル美術館の正面はとくに警備が厳しい。許可証がなければ、ガラスのピラミッドを見ることもできない。
これほどの警備には、「ロックダウン以上」という印象を受けた。何万という柵がそうさせているのかもしれないが、セーヌ川沿いがほぼ全域立ち入り禁止であることを思うと、ロックダウン時とはまた違った緊張感を抱いてしまう。
一方で、不便なのは自動車だ。ゾーン外ではバスや自家用車の渋滞が、ゾーン内では許可を取った配達車・タクシーの渋滞が起きている。
なかには「どこをどう迂回すれば良いのかわからない」「知らなかった」など、警官と言い合いになるドライバーもいた。
※こちらもレッドゾーンとグレーゾーンの境界線。
※あと一週間はこうした光景が広がるのだろう。
セーヌ川沿いのカフェ・レストランや、デパート(ラ・サマリテーヌ)にも影響が出ている。
人通りは減り、聴こえてくる音はパトカーのサイレンばかり。グレーゾーン内の一部のカフェでは、閉店を余儀なくされたところもあるそうだ。
※セーヌ川沿いのデパート、ラ・サマリテーヌでは入り口が一部閉鎖されている。
このようにセーヌ川付近では、かつてないほどの警備態勢が敷かれている。しかし厳重な警備が功を奏したのか、パリでは犯罪・事故の件数が激減しているという。
仏内務大臣が17日に発表した内容では、これまでに87万件の身元調査が実施され、うち3,900人以上が逮捕・拘束(もしくは五輪イベントから排除)された。
また先日行われたパリの聖火リレーは、大きな問題もなく無事に終了したのだが、これは五輪のための特別警備があったからだという。※実は271件の暴力行為と、2件のテロ行為が未然に阻止されていた。聖火リレーにて。
セーヌ川沿いの立ち入り制限は、開会式当日の7月26日まで続く。不便ではあるものの、まずは開会式が成功することを祈りたい。(こ)