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パリ最新情報「パリ市長、セーヌ川での水泳を決行!40年来の約束を果たす」 Posted on 2024/07/18 Design Stories  

 
オリンピック開幕を9日後に控えた7月17日、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏が、大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長らとともにセーヌ川に飛び込んだ。
ウェットスーツに身を包んだイダルゴ市長は、クロールで50mほど泳いだあと、「私たちは何年もこの日を夢見て、一生懸命働いてきました。ジャック・シラクに思いを馳せて」とコメント。元パリ市長で第22代大統領のジャック・シラク氏が果たせなかった夢を、五輪直前に実現した。
 

パリ最新情報「パリ市長、セーヌ川での水泳を決行!40年来の約束を果たす」

※1923年以来、遊泳禁止のセーヌ川。



 
イダルゴ市長の遊泳はこれまで、悪天候と総選挙のために2度も延期されていた。
市長に同行したのは、大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長と、イル・ド・フランス県(パリ首都圏)知事のマルク・ギョーム氏。当初はマクロン大統領も参加すると思われていたが、選挙後の政治情勢のため実現には至らなかった。
 

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※17日の天気は晴れ、水温は20度だった。Paris ma Ville Instagramより



 
セーヌ川の浄化作業は、「いばらの道」だと言われている。繰り返す河川の氾濫と、古く複雑なパリの排水システムに、莫大な資金と時間を要するためだ。
1990年には、当時のパリ市長だったジャック・シラク氏も「セーヌ川で泳いでみせる」と公言したのだが、浄化作業は困難をきわめ、中断を余儀なくされた。
その後、シラク氏はパリ市長から大統領へとステージを移す。つまり約束は「果たせなかった約束」として、のちのパリ市民に語り継がれることになってしまった。
 

パリ最新情報「パリ市長、セーヌ川での水泳を決行!40年来の約束を果たす」

※現在のセーヌ川。開会式向けの観客席があちこちに設置されている。



 
しかしフランス政府とパリ市は2015年以来、セーヌ川とその支流であるマルヌ川を再び泳げるようにするために、多くのプロジェクトを立ち上げてきた。インフラ整備に投資された金額は、総額で14億ユーロ(約2400億円)にもなる。

これほどの額に、反発がなかったわけではない。ただイダルゴ市長と関係者は、セーヌ川の浄化が“未来に向けてのプロジェクト”だと説明している。
遊泳を終えたイダルゴ市長は17日、このように語った。「私たちの目標は、パリを気候変動に適応させることです。セーヌ川をきれいにすることは、もちろんオリンピックを可能にするためでもありますが、何よりも海にダメージを与えないことが目的です」
 

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※トライアスロンのスイムなど、実際の競技会場となるセーヌ川(写真はアレクサンドル3世橋から)。

 
先月6月、たび重なる猛烈な雨により、セーヌ川の汚染はピークに達した。
しかしパリ市と地方当局は、この2週間のうちに、セーヌ川の水質が改善したと報告している。7月に入り、安定した晴天が続いたためだ。※セーヌ川の細菌は雨により増加する。

泳げるセーヌ川ーこれは、パリ・オリンピックをめぐる主要テーマのひとつだ。
開催側と市民とのあいだには温度差が残るが、今後数週間は天候に恵まれるというので、事故なく無事に開催されることを願いたい。(オ)
 

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