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パリ最新情報「観光客減と市民脱出のパリ、五輪直前に宿泊施設の値下げが続く」 Posted on 2024/07/09 Design Stories  

 
パリ五輪スタートまで3週間を切った。歴史的建造物を舞台にした競技、セーヌ川での華々しい開会式、史上もっともエコフレンドリーな大会・・・と、2024年のパリ五輪は、フランスらしさが詰まった印象的なオリンピックになるだろう。

しかし現在のパリでは、宿泊施設や航空券の予約が低調で、「当初の目論見が外れた」と報じられている。実際にパリのホテルは、7月3日の時点で約半分が空室のままだという。1年前の同じ時期と比べると、20%も低い稼働率だ。
 

パリ最新情報「観光客減と市民脱出のパリ、五輪直前に宿泊施設の値下げが続く」



 
民泊サイトのAirbnb(エアービーアンドビー)でも同じことが言える。
オリンピック期間中は約1500万人の観光客がパリを訪れると言われていたが、蓋を開けてみれば、物価の高さや治安問題が影響して、五輪ファンがパリを遠ざけているというのだ。
そのためパリのAirbnbでは、一泊の値段が下がり続けており、現在は平均で302ユーロ(約52,548円)にまで下落した。これでも高価に思えるが、23年末の平均価格1000ユーロを考えれば、70%近くも下落した計算だ。

また物価の高さは、観光客を遠ざけている主な理由のひとつだという。
宿泊施設は7月に入って値下がり傾向にあるものの、公共交通機関や税金(ホテル滞在税)、エッフェル塔、美術館の料金は今年に入ってから相次いで値上げが発表された。

まず、公共交通機関の料金がオリンピック期間中に約2倍に設定される問題。これはパリ市民からも不評を買っている。さらに警備のためのさまざまな規制、宅配便の回避要請などの不便が重なって、パリを脱出する市民があとを絶たない。バカンスシーズンなのでパリから住民がいなくなるのは普通のことではあるが、今年は「いつもは残る人も予定を変更して出かけていく」、という印象を強く受ける。
 

パリ最新情報「観光客減と市民脱出のパリ、五輪直前に宿泊施設の値下げが続く」



 
ルーブル美術館やピカソ美術館、エッフェル塔、凱旋門、ヴェルサイユ宮殿でも軒並み値上げが発表された。こうした各料金の値上げラッシュは、今年はじめから繰り返しニュースで取り上げられていた。現地パリ市民も驚くほどの設定なので、渡仏への意欲がそがれても仕方のないことかもしれない。

ただフランスの主要メディアは、外国人観光客よりも、フランス人観光客の方が大幅に減っている、と伝えている。
先述したように、少し前までは「オリンピック期間中は約1500万人の観光客がパリを訪れる」と言われていた。しかも、そのほとんどは自国フランス人。つまりパリ以外に暮らす大勢のフランス人が、オリンピック中に首都を訪れようとしていたのだ。※24年1月の仏紙Le Parisienより
 

パリ最新情報「観光客減と市民脱出のパリ、五輪直前に宿泊施設の値下げが続く」



 
言い換えれば、今夏のパリをいちばん避けているのは、フランスの勝手を知る当のフランス人だということになる。価格や治安面で敏感な彼らは、オリンピック前に発表された数々のニュースに反応したのかもしれない。先日行われた2度の総選挙も、間違いなく関係するだろう。極右が失速したことで大きな暴動は避けられたが、ここ数週間のみなの関心事は五輪ではなく政治であり、フランスの行く末だった。

2012年のロンドン五輪でも、似たようなことが起こったと言われている。背景にあったのは、やはり物価高と交通問題だったという。
とはいえ、パリ観光局は「オリンピック期間中に一時的な好転劇がある」とみている。7月26日から8月11日までの国際線到着数が、2023年と比べて11.4%増加しているためだ。
期間中はこうした明るい知らせが続くことを期待したい。(せ)
 

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