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パリ最新情報「パリ五輪選手村、初の育児室を開設 スポーツ界でもジェンダーの平等を」 Posted on 2024/06/23 Design Stories
パリ五輪の選手村で、オリンピック史上初となる育児室が開設されることになった。
今夏からはじまるパリ五輪では、男性・女性の選手がほぼ同数になる。これもオリンピックの歴史では初めてのことだ。今回の選手村では、女性アスリートが育児のために夢をあきらめることがないよう、充実したケアが期待される。
これまでの五輪選手村では、子どもたちが寝泊りできない規定だった。子どもが招待されたとしてもそれは日中の限られた時間で、招待パス自体も制限が厳しく、許可されるのはほとんどが医療関係者かスポーツ関係者だった。
しかしパリ五輪の選手村では、育児室を宿泊施設とは別の場所に設けることに決定。これによりアスリートたちは、同じ選手村内の育児室で安心して子どもと過ごすことができる。
五輪史上初となる選手村の育児室は乳幼児向けで、午前9時から午後9時まで開放されるという。ここではおむつ・おしりふきが無料で提供されるほか、親子でリラックスした時間を過ごせるよう、絵本やおもちゃが設置される(託児サービスはなし)。
前回、1924年のパリ五輪では、選手に占める女性の割合はわずか5%だった。男女比はそれから100年かかってやっと同数になったわけだが、普段の家事・育児に関してはいまだに女性の負担が大きいと言わざるを得ない。
しかしフランスが日本と少し異なるのは、そういった事情が「女性だけの不満」に留まらず、より社会的・政治的なレベルで議論されることだろうか。
今回の育児室の実現も、フランス人柔道家で金メダリストのクラリス・アグベニュー氏が「大会中も娘と一緒に過ごせる時間を」と、マクロン大統領に直接働きかけたことがきっかけだった。
またフランスではそうしたジェンダーの壁をなくそうと、日常のスポーツの場でも女性たちが活躍している。
たとえば格闘技ジム。パリの格闘技ジムでは女性のコーチも多く、性別・年齢の垣根なく指導するという光景を見ることができる。
五輪における女性コーチの割合はまだ少ないが、IOCが世界50か国100人以上の女性に“コーチングプログラム”を提供していることから、いずれはコーチの男女比も半々になるのかもしれない。
使い捨てプラスチックの禁止、競技会場の95%は既存か仮設で・・・と、サステナブルな一面が注目されるパリ五輪。しかし、パリ五輪はそれと同じようにジェンダーの平等にもコミットしている。
オリンピック・パラリンピックではメダルや記録に注目されがちだが、今大会は女性たちの葛藤・活躍にも焦点をあてた初めての五輪になるだろう。(こ)