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パリ最新情報「セーヌ川水質、改善が発表されるも仏政界は混乱、市長の遊泳も延期に」 Posted on 2024/06/16 Design Stories  

 
パリを流れる、セーヌ川の水質問題。これは、パリオリンピック・パラリンピックが抱える大きな課題のひとつだ。
セーヌ川はパリ五輪の開会式、トライアスロン、マラソンスイミングの舞台となることが予定されている。しかしテロの脅威、セーヌ川の水質問題など“安全面”への懸念は、開催まで1か月あまりとなった今でも払拭しきれていない。
 



パリ最新情報「セーヌ川水質、改善が発表されるも仏政界は混乱、市長の遊泳も延期に」

 
かねてより取り沙汰されていたセーヌ川の水質問題だが、その分析・最新結果が6月14日、はじめてパリ市から発表された。
調査は6月1日〜9日までアレクサンドル3世橋下(実際の競技会場)を含む、セーヌ川の4つのポイントで行われた。
報告によれば、6月1日から8日にかけてのふん便性大腸菌の濃度は、4つの地点すべてで1,000コロニー形成単位(CFU)/100mlを超えていたという。(最も高かったのは6月5日、上流のベルシー地点で8,000CFU/100mlだった)
ところが最終日の6月9日には、国際トライアスロン・オープンウォータースイミング連盟が大会開催を許可するための基準値である、1,000CFU/100mlを下回ったことが分かった。

競技をセーヌ川で行うためには、大腸菌の濃度は100mlあたり1,000CFU、腸球菌では100mlあたり400CFUを超えてはならない。今回の調査では最終的に腸球菌のレベルも下がり、200CFU/100ml弱におさまったという。
 



パリ最新情報「セーヌ川水質、改善が発表されるも仏政界は混乱、市長の遊泳も延期に」

 
パリ市は結果について、「春に雨が多ければ、初夏のセーヌ川は通常の流量の3倍から4倍になる。この天候が分析にとって最も不利な要因だった」と述べている。
実際にパリとパリ周辺では5月、例外的な降雨量を記録した。雨が多ければ下水道のオーバーフローを引き起こすほか、雨水と廃水が混じって川に流れ込んでしまうからだ。
もちろん汚染の問題だけではない。降水量の多さは、セーヌ川に強い流れをもたらす。
フランスのオープンウォータースイミングチームが6月10日にテスト水泳を行えなかったのは、この強い水流によるためだった。

こうして繰り返される予定の中止・延期に、水質が改善されたとはいえ関係者の不安は募るばかりだ。セーヌ川の水質問題を長年聞かされている住民の不安も拭えていない。
そんな懸念を受けてか、パリ五輪委員会は水質が改善されない場合の「プランB」を発表した。プランBとは、「競技を数日延期するが、会場は変更しない」という代替案である。
セーヌ川の浄化計画に巨額の資金を投じてきたパリ市の自信もあるのだろうが、水質が今後の天候に大きく左右されるのは言うまでもない。
 



パリ最新情報「セーヌ川水質、改善が発表されるも仏政界は混乱、市長の遊泳も延期に」

 
またセーヌ川に関する問題は、パリ市長の「五輪前に泳ぐ」という約束にも及んでいる。
イダルゴ市長は当初、6月23日にセーヌ川で遊泳することを公言していた。しかしこれは、水量が多すぎるという理由で6月30日に延期。ところがその6月30日も、フランス下院総選挙のため再び延期になってしまったのだ。
 



 
「セーヌ川をオリンピックの競技会場に」 ーこの計画が発表されて以来、セーヌ川の水質問題は常に注目を集めてきた。しかし五輪直前にフランスの政界がここまで荒れるとは、誰も予想していなかったことだ。混乱はもちろん国全体に及んでおり、今週末は各地で左派によるデモが開催されている。
こうした政治の波乱は、オリンピックにまったく影響がないとは言い切れないだろう。「パリ五輪を成功させたい」という思いは左派も右派も同じだというが、フランスの政治家・国民の関心は今、6月30日と7月7日に行われる総選挙に向いている。(内)
 

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