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パリ最新情報「パリ五輪を標的としたテロ、未然に阻止。最高レベルの警戒が続くフランスで」 Posted on 2024/06/03 Design Stories
5月31日、フランス内務省から、パリ五輪を標的としたテロを計画した罪で、18歳の男を逮捕したと発表があった。
チェチェン共和国出身の男は五輪期間中、仏中部サン・ティティエンヌのサッカー競技場でテロ行為を企てていた。
フランス内務省の発表によれば、この人物は、スタジアム外の軽食スタンド付近で観客や警備員を襲った後、自らも命を絶ち殉教することを望んでいたという。
実行犯としては単独の予定だったが、男は暗号化されたアプリケーション上でイスラム過激派とコンタクトを取っていたとされる。なおこれは、パリ五輪へのテロ計画が阻止された初めてのケースだった。
7月26日から始まるパリオリンピック・パラリンピックは、「広く開かれた大会」をスローガンとしている。
セーヌ川が開会式会場になるほか、世界的観光地のヴェルサイユ宮殿やエッフェル塔付近も競技会場に選ばれた。しかし華々しいパリ五輪計画の裏には、「警備はどうするのか?」という疑問が常に残る。
現地パリでは開幕が近づくにつれその詳細が明らかになっているのだが、仏政府が敷く警備態勢にはやはり「前代未聞レベル」と言わざるを得ない。
まず、オリンピックとパラリンピック期間中には、約4万5000人の国家治安部隊と、3万5000人の警察官が出動する。仏政府はそれ以外にも、2万人近くの民間警備員を毎日動員させる予定だ。
パリとパリ近郊ではこれだけの人が警備にあたる。現在では競技会場付近、ショッピングセンター、大型駅などでも警備の強化がスタートしている。
ただ仏政府は「五輪関係者にも犯罪者が紛れ込む可能性がある」として、パリ五輪に関わるすべての人を対象とした42万人分のプロフィール検査を実施していた。
すべての人とは、民間警備員、ボランティア、聖火ランナーおよび同行者を含む五輪関係者、全員のことである。
5月までに行われた検査では、そこからSリスト(仏政府によって登録された危険人物)の52人を含む1,618人が排除されたという。1,618人の中には前科者や、過激行動を繰り返す環境活動家も含まれていた。
これを受けたダルマナン内相は、「フランス人は、我々がオリンピックに近づくすべての人をチェックしていることを知るべきだ」と強調。また対象は物質的な犯罪だけでなく、サイバー攻撃も含まれるということだ。
仏政府はこうして、テロ行為の未然防止に心血を注いでいる。
現在のパリでも次々に交通規制が敷かれ、競技会場付近では車両が通行止めになった。特にスケートボード等の競技会場になるコンコルド広場では、6月1日より車、自転車、歩行者すべての立ち入り禁止措置がスタートしている。今後は他会場付近の地下鉄駅、駐車場なども利用不可になるので、滞在予定のある方は十分に注意したい。
2015年のパリ同時多発テロの記憶から、「いつ、どこで何があるか分からない」と身を引き締めるフランス人は少なくない。よってパリ五輪における大規模な警備も「仕方ない」とする市民がいる一方で、敷かれた交通規制に戦々恐々としている状態だ。
五輪期間中は一般的にフランス人のバカンスシーズンだが、働く人々からは渋滞と犯罪を避けるため、自転車に切り替えて出勤するという声がかなり上がっている。
こうした警備が最高レベルに達するのは、オリンピック開幕初日、セーヌ川での開会式だ。
仏政府の発表によれば、当日セーヌ川付近に配備される警察官・憲兵隊の数は約4万5000人に上るという。その中にはダイバーや警察艇、世界最高峰と謳われるフランスの対テロ特殊部隊、GIGNの350人も含まれている。
7月18日13時からはセーヌ河岸が立ち入り禁止(あらゆる人が対象)になるのだが、現在は立ち入りに必要なORコード取得に向けての申請が始まっている。(大)