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パリ最新情報「日本のアニメ『攻殻機動隊』がフランスの香水に!」 Posted on 2021/11/05 Design Stories  

パリの香水ブランド Etat libre d’orange(エタ リーブル ド オランジェ)が、なんと日本のアニメをテーマにした新作香水を発表した。
これは香水業界でも初の試みとなる。
今まで日本にインスパイアされた香りには、「抹茶」や「京都」など、一般的なイメージを損なわないものが多くあった。しかし、ここまでテーマを絞った香水は未だに聞いたことがない。

それではどのアニメが香水になったのかというと、世界中に衝撃を与えたSF超大作の「攻殻機動隊」である。
英語名で「THE GHOST IN THE SHELL(ゴースト イン ザ シェル)」、タイトルがそのまま香水になってしまったというから、聞き捨てならない話だ。

パリ最新情報「日本のアニメ『攻殻機動隊』がフランスの香水に!」



フランスには30~40代の男性を中心とした、熱狂的な日本のアニメファンが存在する。
Etat libre d’orangeの創始者で調香師のエチエンヌ・ドゥ・スワール氏もまた、「攻殻機動隊」の大ファンだったという。
特に「攻殻機動隊」についてはこちらでも「マスターピース」との呼び声が高く、1995年の公開から25年以上たった今でも色褪せることのない不朽の名作だ。

スワール氏は今回のTHE GHOST IN THE SHELLを発表するにあたり、次のようにコメントしている。
「最初に、私たちは日本が大好きであるということを知っておいてください。私は特に東京が好きで、その鋭さやユニークさが好きです。私たちの新作『THE GHOST IN THE SHELL』を、『攻殻機動隊』という偉大な作品の発祥の国、日本で発売できることをとても嬉しく思っています」

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ところで、Etat libre d’orangeとはどういったブランドなのだろうか。
これはパリでもニッチ中のニッチフレグランスと言うべきか、非常に切れ味の鋭い、「反骨精神」の塊のようなブランドだ。

大手ファッション香水の「マス向け」な香りに嫌気がさしたというスワール氏。
パンクでロックなブランドコンセプトをひっさげ、大衆フレグランスに異論を唱えた香水界の革命児である。

いや香水にパンクや反骨精神など求めていないのだが…と感じる方も多いと思う。
しかし、いざこちらの香りを嗅いでみると、その鼻疲れしない心地の良さに驚いてしまう。
作品としては、英女優のティルダ・スウィントンとコラボした「Like This」、フランス・ロワール渓谷の古城をイメージした「500 Years」などがある。
エレガントな部分と、内からたぎるような激情の「二面性」があるのもブランドの持ち味だ。

パリ最新情報「日本のアニメ『攻殻機動隊』がフランスの香水に!」



そして今回、画期的といえる調香がTHE GHOST IN THE SHELLにおいて行われた。
それは、「攻殻機動隊」のテーマを背景に、天然香料と最新のバイオテクノロジー香料を組み合わせ、香水の「未来」を表現したというもの。

「攻殻機動隊」では、AIと人間とを明確に区別する「ゴースト(魂)」の有無が肝になっている。
その「AI」の部分をバイオテクノロジー香料によって、そして「生身の人間」の部分を天然香料で表しているのが、今回のTHE GHOST IN THE SHELLなのだ。

まず、トップノートはかなり硬質なシトラスで始まる。
落としたら割れてしまいそうな、ガラスのような「柚子」の香りと、新開発された「アクエル」という人工香料の組み合わせ。
尖っていて、香水らしからぬ「メタリック」な香りに戸惑ってしまう。

良い香りではあるものの、そのアンバランスさに脳内が「バグ」を起こした感覚になる。
香水とは、これでいいのか?と。
しかし、ここで諦めてしまうのはあまりにももったいない。
次のミドルノートこそが、THE GHOST IN THE SHELLの真髄なのだ。

パリ最新情報「日本のアニメ『攻殻機動隊』がフランスの香水に!」



ミドルノートはフランス語で「note de coeur」(ハートノート)と呼ばれる。
つまり、「心」「ハート」といった、いちばん重要な部分である。
THE GHOST IN THE SHELLでは、ここで天然のジャスミン、ミルクが人間の肉体のメタファーとして配合されている。

その美しさといったら例えようがないほどで、人工的な香料が引き立て役となって、ジャスミンがより生々しく、人の体液のような濃厚さを保っているのだ。
動物的本能、血液の温度、愛の記憶、パッション、人肌。
そういった、生きることへの「執着」さえ感じるミドルノートである。
ラストは悶々とした甘いノートへ転がり込み、グルーヴ感あふれる香りの変化が。エンディングでは西方浄土のように輝くバニラ香がそっと迎え入れてくれる。

また、THE GHOST IN THE SHELLにおいて明記できるのは、バランスがとれているようで、非常にアンバランスであるということだ。
バランスが鍵だということ知りつつも、「アンバランスはもっと自分らしい」と思える人に、世の中にありふれた香りに「NO」を突きつける人に。

シャキッとした潔い香りなので年齢・性別は問わないが、女性がこの香りをまとっていたらかなりカッコいいのではないだろうか。
シャネルの「エゴイスト プラチナム」が好きな方には特に良いかもしれない。

パリ最新情報「日本のアニメ『攻殻機動隊』がフランスの香水に!」



「攻殻機動隊」の世界で描かれているのは、AI脅威論などではなく、機械と人間が融合した姿だ。 半AIの主人公、草薙素子の「人間が人間であるための部品が決して少なくないように、自分が自 分であるためには驚くほど多くのものが必要なの」といったセリフも哲学的で面白い。

ハリウッドの極端さにはない、このような哲学的なストーリー展開がフランス人にとってはグッとく るのだろう。
Etat libre d’orangeはこれまでも、アップサイクルした香料で作る香水や、AIと人間の調香師によ る合作香水など、話題に事欠かない独特な香りを手掛けてきた。 天然とバイオテクノロジーの原料が補完しあう香水の未来、人体の驚異を語る香水。
新作THE GHOST IN THE SHELLからは、劇中と同じ2029年の未来が見えるようだった。(セ)

THE GHOST IN THE SHELL(ゴースト イン ザ シェル)
パリのEtat libre d’orangeおよび全世界のNOSE SHOPで10月15日より販売

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