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パリ最新情報「パリと蘭の素敵な関係、『千と一輪の蘭の花』。パリ植物園に春がやってきた!」 Posted on 2023/02/19 Design Stories
パリでは日中の気温が14度にもなり、長かった冬にようやく区切りがつこうとしている。
花屋さんにはたくさんのミモザが置かれていて、カフェのテラス席に座る人も増えるなど、街の雰囲気はここにきて急に明るくなったという印象だ。
パリにはもう一つ、春を告げる小さなイベントがある。
パリ5区にある癒しの庭園、Le Jardin des Plantes de Paris(パリ植物園)で開催される「千と一輪の蘭の花」展だ。
これは敷地内に“1001輪の蘭が飾られる”という博覧会で、2月〜3月にかけて毎年行われている。
そして2023年の今年は、初年度の開催からちょうど10周年にあたるということだ。
※会場はパリ植物園・敷地内にある大温室。
パリと蘭、少々意外な組み合わせではあるが、実のところ愛好家が結構多くいる。
マダムのお宅のリビングに飾られたり、ホテルのロビーに置かれたりと、素敵な場所には蘭がある、といったイメージもある。
ただ蘭の栽培は、もともと涼しく乾燥したフランスには適していなかったという。
しかし熱帯でしか目にすることのできない美しくミステリアスな蘭は、フランス人の心を強く惹きつけて止まなかった。
1900年に仏人植物学者のノエル・ベルナール氏が蘭の発芽を促すカビ(リゾクトニア)を発見すると、フランスで一気に栽培が普及し、一般販売が各所で行われるようになる。
※今でも販売される蘭は、温室栽培のものが多い。
「千と一輪の蘭の花」会場である大温室は、1936年に建築家ルネ・ベルジェ氏によってアールデコ風に建てられた。
広さは750㎡で、博覧会では蘭が心地よいと感じる気温22度、湿度60%に一定して保たれる。
ひとたび入れば蜜のような甘い香りに迎えられ、世界は一瞬でトロピカル風に。
10周年を迎えた今年は、パリ植物園とヴェルサイユ植物園、そしてフランス国内5つの園芸団体による合同開催だった。
蘭のプロたちが展示の準備に費やした時間は75時間となり、もともとあった植物はそのままに、ポピュラーなものから希少種までたくさんの蘭が温室内に散りばめられた。
そして今年の目玉は、“白とピンクの蘭のタワー”。これは約400本の蘭が、高さ3メートルの塔から咲いたという設定のオブジェになっている。
また温室内では鳥のリアルな鳴き声もBGMとして流れていた。
このBGMは毎年、「千と一輪の蘭の花」展のためだけに特別に作成されるそうだ。
蘭の博覧会には思いのほか若者の姿が多い。
というのは、蘭がフォトグラファーを目指す若者の被写体であったり、美術を学ぶ学生のデッサン対象として人気のため。
美術館の地べたに座ってデッサンをする風景はよく見られるが、植物園でデッサンというのも、パリならではの光景だと言える。
大温室で蘭を見学したあとは、お隣で開催されている直売所に足を運ぶこともできる。
こちらはイベントに合わせて期間限定でオープンしており、フランス園芸家の手によって愛情たっぷりに育てられた蘭が多数販売されている。※2月8日〜3月6日まで。
なお、フランスでは野生の蘭は保護植物なので、採って花瓶に活けたりしてはいけない。
本来の見ごろは4月中旬から6月だというから、今回は1001輪の蘭によって一足早く、春を感じさせてもらえた。(る)