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パリ最新情報「フランスの美食を五輪アスリートに!世界最大となる選手村食堂で」 Posted on 2024/03/07 Design Stories
2月29日、五輪アスリートたちが宿泊する選手村がパリ北郊外(サン・ドニ)に誕生した。
期間中、選手村では約1万5千人のオリンピック選手、9千人のパラリンピック選手と同行スタッフらが滞在する予定になっている。
※五輪のシンボルが掲げられた現在のパリ市役所。
これほどの人数を受け入れる選手村は、全体で52ヘクタール(サッカーコート70個分)という広さだ。
敷地内には宿泊施設のほかコインランドリー、食堂、フードトラック、臨時警察署、美容院、フィットネスルームやバー(ノンアルコール)などが設置され、移動には自転車か電動シャトルバスが使われる。
今回の選手村はパリ五輪委員会が「持続可能なオリンピック」と掲げたように、既存の建物を活用して設計された。
フランス・リノベーション業界の「最高傑作」とも言われる選手村だが、中心に位置する食堂はその中でも規模がいちばん大きい。
なお期間中は、同食堂が世界最大のレストランに生まれ変わる予定だという。
選手たちが利用する食堂は、もとは仏映画監督のリュック・ベッソン氏が立ち上げた映画撮影スタジオ「シテ・デュ・シネマ」だった。
これが改装され、五輪期間中には世界最大のレストランとして約3,500席が設置される。
用意される食事は一日平均で約4万食にもなるという。
働く人数も最大規模で、200人のシェフと1000人近くのホールスタッフが交代で選手たちを迎える予定になっている。
©DR cité du cinéma
※食堂となる会場。
今回はおよそ80%の選手がキッチンのないフラットに滞在するということで、食堂の果たす役割は非常に大きい。
パリ五輪委員会は、ここでガストロノミーの国フランスならではの食事を提供すると発表した。
まず、大会期間中に提供されるメニューは500種類以上にもなる。
食材の80%はフランス国内で生産したもので(肉・卵・乳製品は100%フランス産)、うち30%はオーガニック素材、25%は「選手村から250kmの範囲内」で運ばれてくるものとなる。
さらにフランスの美食のシンボルであるパンは、本格的なパン窯が設置されその場で焼き上げられるということだ。
食文化の異なる選手たちへの配慮も欠かせない。
料理の区分は大きく分けて、フランス料理、アジア料理、アメリカ大陸料理、アフリカ、カリブ海、中東料理の6つで構成される。
レセプションでは栄養アドバイザーが常駐するほか、各食事にカロリーやタンパク質、炭水化物、脂質の量がフランス語と英語で表示されるそうだ。
また今回は特別に、もち米がアジア選手団に、金時豆が南米選手団に、そして黒豆が北米選手団に用意される。
野菜の調理法も細かく設定されていて、ボイル、ロースト、ソテーの3つから選択可能になるという。
この食堂は24時間営業で、メニューは競技前、競技中、競技後、そして宗教別といろいろな栄養ニーズに対応する。
ちなみに選手たちには大会オリジナルの水筒が配られ、選手村に設置されたフォンテーヌ(水汲み場)のどこからでも水を汲むことができる。
使い捨ての食器・カトラリーが廃止されるのもオリンピック史上初めてだ。
食器類は再利用できるように、ロゴのない “フランス製磁器 “で作られた。
選手村料理長のシャルル・ギロワ氏は、「料理は分かち合う時間。選手たちにはフランスの美食を楽しみ、くつろいでもらいたい」と語る。
このように2024年の選手村では、フランス産の食材を使うだけでなく、食事まわりの道具にもフランスらしさが織り込まれることになった。
オリンピック終了後の選手村は地元地域に還元され、住宅やオフィスとして使われる予定になっている。(内)