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パリ最新情報「ノートルダム大聖堂のシンボル『鐘』がパリに戻る。再開3か月前に」 Posted on 2024/09/16 Design Stories
2019年の火災事故から5年半、パリのノートルダム大聖堂に、修復作業を終えた8つの鐘が戻ってきた。
これらの鐘は、火災で損傷を受けた北鐘楼から取り外されていたもの。ノルマンディー地方の鋳物場にて洗浄・修復され、9月12日朝にパリへと戻った。
※Le Parisien X
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8つの鐘は、すべてが北塔に位置していた。火災時は幸運にも落下を免れたが、粉じんを取り除き、隅々まで洗浄する必要があった。
なお、ノートルダム大聖堂の鐘は、聖人へのオマージュとしてすべてに名前がつけられている。今回の8つにも「ガブリエル」「ジャン=マリー」といった名前がつけられていて、一番小さいもので850キロ、もっとも大きい“大鐘”で4.2トンの重さになるという。
現在では、これらの重量と、強力な振動を支えることができるよう、鐘楼の骨組みが完全に修復されている。
作業を担当したノルマンディー地方の鋳物場は、オリンピック・パラリンピックの陸上競技会場にあった、「勝利の鐘」を作った工房としても知られている。大会時は「ノートルダム再建の支援」として、金メダリストたちが勝利の鐘を鳴らしていた。この鐘は今後、ノートルダム大聖堂に残されることが決まっている。
※ノートルダム大聖堂の近影
ノートルダム大聖堂の鐘楼が完成したのは、1265年頃と非常に古い。鐘の数はかつて20個だったが、フランス革命などの歴史的事件で取り外されてしまい、現在は10個に。今回はそのうちの8つが修復された。
また、今回の修復対象ではなかったが、ノートルダム大聖堂には「エマニュエル」と呼ばれる大鐘が存在している。重さは13トン以上、340年以上の歴史を持つ最大の鐘だ(2013年に修復)。
ノートルダムの鐘は毎日鳴らされるものの、このエマニュエルだけは歴史を通じて、国王の戴冠式や第一次世界大戦、第二次世界大戦の終結など、フランスにとって重要な日を記念して鳴らされてきた。もちろん、クリスマス・復活祭といった特別な日や、教皇の死去や選出時にも鳴らされる。
ノートルダム大聖堂の再開日、12月7日(一般公開は8日)には、エマニュエルを含む鐘が一斉に鳴り響く予定だ。
このようにノートルダム大聖堂の鐘は、パイプオルガンと並んで、大聖堂の重要な「声」だという。鐘は今でも時刻やミサを告げる「声」の代わりであり、重い鐘は低音を、軽い鐘は高音を奏でている。
そのため12日の到着時には、修復にあたった鋳物場長のポール・ベルガモ氏が、「鋳物師にとって、ノートルダム大聖堂のために働くことは生涯をかけた夢です。私たちはこの再建に参加できたことをとても誇りに思っています」と、力強く述べていた。
再開まで90日を切ったノートルダム大聖堂。火災前は、ここに毎年1,000万人もの人々が訪れていた。
現場では今も懸命な作業が続けられているが、このたび戻った鐘は、吊り上げのテストと音色の調整が行われたあと、10月初旬に元の位置へと戻される。
そんな大聖堂の周辺には、再建の進捗状況を一目見ようと、連日多くの人が集まっている。鐘が到着した12日には、訪れた人々から大きな歓声と拍手が上がっていた。(ち)