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パリ最新情報「日本からでも楽しめる! パリの美術館が閉鎖中に企てる世界に向けたコミュニケーション」 Posted on 2021/03/18 Design Stories
コロナ禍で閉館を余儀なくされているパリの美術館が様々な工夫を凝らし、コミュニケーションを図っている。苦境に立たされている美術館だが、世界に向けて情報発信を始めたことで、パリに住まずとも充実した情報に触れられるようになった。
まずは、世界で最も来場者の多い美術館のひとつ、ルーブル美術館。同美術館によると、コロナ禍での閉館により、9千万ユーロの損失があったそうだ。New York Timesの取材に対し、この経済的損失に関して、ルーブル美術館の広報担当アデル・ジアネ氏は「コロナ禍において、可及的速やかに、ルーブルの名前を多様かつ最大限に活用せねばならない」と語っていた。その答えのひとつが、ECサイトでのグッズ販売だ。 コロナ禍で美術館の公式サイトへのアクセスは、爆発的に増加した。以前、グッズ販売は、パリのミュージアム グッズを総合的に扱う「Boutique de Musées」に頼っていたが、このたび、ルーブル美術館専用のグッズ販売サイト「Boutique Louvre a>」を立ち上げた。試しに日本への送料を確認したところ、ものにもよるが小物であれば17€前後(日本円で2000円程度)で届く。日本では手に入らないオリジナルのクッションや、紅茶、香水まで取り揃えているので、ちょっとした贈り物としても気が利いている。
また、コロナ禍以前の2016年からの活動ではあるが、 Youtube動画での活動も目覚ましい。フランスのYoutuberを招待、動画の制作を依頼してる「Le Louvre invite les YouTubeurs」は、どれも個性あふれている。物静かな映像美をみせるものや、美術専門家ではない人の目線に立ち、素朴な疑問の投げかけに応えるものなど、その切り口は様々だ。
もちろん、定番のデジタルミュージアムツアーや、修復現場の紹介動画も充実している。全てフランス語ではあるが、Youtubeの自動翻訳機能で日本語の字幕をつけることができ、少しおかしい日本語ながらも、そこそこ意味を理解することはできる。
次に、パリのミュージアム総合サイト「Paris Musées a>」はインスタグラムを使って、ファンとの交流を図 っていた。「Mon musée(私の美術館)」という1月に開催されたイベントで、インスタグラムの「ストーリー」という短い動画を投稿する機能を利用。ファンは自分で撮影した動画に、美術館オリジナルの額縁フィルターをかけ、ハッシュタグ「#Monmusée」を付けて投稿する。美術館が それらの動画を審査し、順位をつけるというもの。商品は、ミュージアム年間パスや、ミュージアムグッズなど
であった。イベント自体は終了してしまったが、額縁フィルターは今でも使うことができるので、日々の投稿動画を額縁付きのアートに仕上げても楽しい。「Paris Musées」のインスタアカウントページにある顔マークのタブをクリックし、額縁の絵の部分を選択することで、フィルターをかける撮影モードに切り替わる。
アカウントのメイン画面では、収蔵作品の画像が並び、実際の鑑賞では近づけないほどの距離のズーム映像なども見ることができる。
そして、最近の一番の驚きは、ヴェルサイユ宮殿が、若者に支持を得ているSNS「TikToK」を始めたこと。宮殿内をたったの数十秒という早送りで見学できる投稿が特に人気で、「イイネ」という意味のハートを5万近く獲得している。投稿を開始した2020年11月からの4ヶ月でフォロワーは10万人を突破し、若い世代への注目度は上々。足場が組まれたグラン・トリアノンの大掃除の様子など裏舞台も見られるのが魅力。
他にも、「TikToK」には、グラン・パレや、ケ・ブランリ美術館なども加わり、どの施設も若者への興味を引くべく、今までの荘厳なイメージとは異なる一面を見せている。
フランスで美術館の閉鎖は、「コロナ対文化の闘い」ともいわれているが、文化が勝利する日が待ち遠しい。(ウ)