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パリ最新情報「印象派誕生150年記念、オルセー美術館で大規模な企画展が開催!」 Posted on 2024/04/04 Design Stories
パリのオルセー美術館で、印象派誕生150年を記念した特別な企画展が開催されている。
企画展のタイトルは、「パリ1874年:印象派の創始(Paris 1874 : Inventer l’impressionnisme)」。
印象派が誕生したまさにその瞬間に立ち会うことができる、貴重な企画展だ。
※大盛況のオルセー美術館。企画展には約130点の作品が集まっている。
パリで最初の印象派展が開催されたのは、今から150年前の1874年、4月15日のことだった。
とはいえ、開催場所はオペラ座近くにある写真家・ナダールの旧スタジオで、批評家も画商も参加しない「公式外」のアトリエだった。
画家メンバーはモネ、ルノワール、ドガ、ピサロ、シスレー、セザンヌなど約30人。
今でこそ巨匠と呼ばれる彼らだが、当時はフランスで権威ある官展(ル・サロン)に落選し続けていたという。
※ルノワール作『 la Danseuse(踊り子)』。初の印象派展(1874年)より。
今回の企画展では、その第1回目の印象派展が大きく取り上げられている。
たとえばルノワール作の『 la Danseuse(踊り子)』は、キャンバス上の空気を振動させるかのように軽やかなタッチが魅力的な一枚だ。
しかしこういった作風は、歴史や神話のワンシーンを再現した「新古典主義」からかけ離れたものであったため、客からもジャーナリストからも全く受け入れてもらえなかったという。
結果、売れたキャンバスはモネの『Impression, soleil levant(印象、日の出)』を含むわずか4点。
画家たちが共同出資で開催した初の印象派展は、一人当たり184.50フランの負債を残すという大失敗に終わった。
※セザンヌ作『Une Modern Olympia(現代オリンピア)』、初の印象派展(1874年)より。当時の仏芸術アカデミーや鑑賞者は、美しさよりも正確さを好んでいた。
そんな中でオルセー美術館は、印象派絵画との違いを見せるため、同年に開催された官展の作品(ルーブル美術館にあるようなアカデミックな歴史画)も展示した。
来場者はつまり、美術史の変わり目を行ったり来たりしながら、印象派が誕生したまさにその瞬間に立ち会えるのだ。
これも「切れ味鋭い企画展」と評判の、オルセー美術館らしい展示方法だと言える。
企画展の後半では、「印象派」という言葉の原点になったモネの作品『Impression, soleil levant(印象、日の出)』が登場する。
この作品は当時、パリで影響力のあった風刺新聞「ル・シャリバリ」の記者から嘲笑を込めた意味で「印象派」と呼ばれていたそうだ。
※モネ作『Impression, soleil levant(印象、日の出)』
しかし、新進気鋭の画家たちは戸外制作にも力を入れるようになり、ある瞬間、ある風景、ある季節の美しい物語を次々とキャンバスに収めていく。
こうした作品は当時ではかなり衝撃的であったものの、次第に銀行家、医師、歌手などパリのブルジョワ層を中心に広まっていった。
現に1877年に開催された第3回印象派展では、告知ポスターや広告がパリ中に貼り出され、来場者も8千人以上を数えたそうだ。
※ルノワール作『Le Bal du moulin de la Galette(ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会)』第3回印象派展より
嘲笑が賞賛へと変わった理由には、普仏戦争で疲弊していたフランス社会が背景にあったのかもしれない。詩の一節のような描写に、多くの人が共感したのだろう。
いずれにしろ日常をテーマにした印象派の作品は、その強い実力と吸引力で後の美術界に革命を起こすことになった。
そんな名作が一堂に会する今回の企画展は、やはり「印象派の殿堂」と呼ばれるオルセー美術館で3月26日〜7月14日まで開催されている。(内)