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パリ最新情報「生まれ変わったパリの邸宅美術館、ブールデル彫刻美術館がいま新しい。」 Posted on 2023/04/25 Design Stories
ボヘミアンな雰囲気漂うモンパルナスの一角に、仏彫刻家アントワーヌ・ブールデルの愛した工房兼アパルトマンがある。
ロダン、マイヨールらと共にヨーロッパを代表する彫刻家と呼ばれたブールデルは、この場所をサンクチュアリとして45年間も居住し、ひたむきに制作を続けていたということだ。
遺族の意思もあり、邸宅美術館として生まれ変わったのが1949年。
以来、彫刻美術館として秘かな人気を博していたブールデル美術館だったが、今年3月15日に2年間の改装を経て堂々の再オープンを果たした。
パリの彫刻美術館といえば、ロダン美術館が最も有名である。
しかし巨匠ロダンと20歳以上も年の離れたブールデルは、彼の弟子であり共同制作者であり良き友でもあったという。
ブールデルは24歳の時にパリのエコール・デ・ボザール(歴史ある国立美術学校)の奨学生になった。
ギリシャ神話に多くのインスピレーションを受けたという彼の彫刻は、生まれ変わったブールデル美術館の入り口付近にも展示されており、無料とは思えないほどの見ごたえを来館者にもたらしてくれる。
無料というのは、ブールデル美術館がパリ市の運営により解放されているため。
企画展は有料だが、常設展であれば一年を通して“手ぶら”で入場できる。
今、ブールデル美術館はそんな朗報を聞きつけたパリジャン・パリジェンヌたちで大変な賑わいを見せている。
特にアトリエは「一見の価値あり」といった雰囲気で、自然光による陰影が彫刻たちに命の息吹を与えているようだった。
パリの大型美術館は広く情報量も多いため、見終わった後には頭がクラクラとしてしまう。
しかし邸宅美術館は個人宅を改装していることがほとんどなので、丁度良いサイズのほか中庭を散策できるのも気分転換となって良い。
※現在、ブールデル美術館の中庭ではグリーンが生い茂っている。彫刻と緑の相性が良さからも、屋内鑑賞だけではない楽しみ方をここで覚える。
歴史に名を残した芸術家の暮らしぶりが垣間見える、というのも邸宅美術館の特徴だ。
こちらはサロン(居間)があった場所で、ブールデルと妻、そして娘のロディアがよく行き来した場所となっている。
※ブールデルの名を不朽のものにした『弓を引くヘラクレス』も、大小さまざまな作品が展示されている。
※第二のアトリエがあった場所を改装させた併設カフェ。
ブールデル美術館のもう一つの話題は、併設カフェの「Le Rhodia(ル・ロディア)」だろう。
南米料理をアレンジしたブランチが看板メニューで、オーガニックではあるが内容はベジタリアンやヴィーガンに限っていない。
春のパリではこのように、週末のブランチを美術館併設のカフェ・レストランで楽しむことが人々の癒しとなっている。
ブールデルには大勢の弟子がいて、南米出身者も多かったそうだ。
先生としても人気があり、優れた彫刻家が彼のクラスから多く生まれたという。
フランスの芸術家は相性の良い土地や家を求めて各地を転々とすることが多い。
しかし光にあふれ穏やかな雰囲気からは、ブールデルがこの地に45年間も留まった理由が分かる気がした。(大)