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「フランスで広がる”アップサイクル”という、もったいない、から生まれた新しい運動」 Posted on 2023/03/05 Design Stories
フランス人は古き良きモノが好き。
巷のフリーマーケットはもちろん、アンティークマーケットも大勢の人で賑わう。
そこではいろんなモノがリサイクルされている。
しかし、近頃、静かなブームになっているのが、手に入れた品物を自分流に直したり、改良したして転売する、アップサイクルという運動…。
経済的であり環境にも優しい、この画期的な流通運動は正にエコフレンドリーとして広まりつつある。
では、どうやって品物が人々の間に流通し、どのように加工され、最終的に世界に一つしかない品モノ(商品)へと生まれ変わって行くのか、を覗いてみよう。
パリの道を歩いていると建物の前などに、無造作に捨てられた、様々な使い古された家具やモノを見かけることがある。
市に届けを出せば無料で粗大ごみとして処理をしてくれる。指定された番号を紙に書き、それを捨てる粗大ごみに貼って、家の前の歩道に出せば、その指定された時間に、収集業者が取りに来る。
しかし、収集車が来るよりも前に、通りすがりの人が、他人が捨てたモノを持ち帰る。これが実に多いのだ。
ある意味、パリジャン的、と言っても差し支えない。日本人だと、どうしても、他人が捨てたモノはタダのごみになる場合が多いのだけど、パリジャンにはそれがお宝に見えるらしい。
そこで、パリジャンのモノを大事にする気質を利用した新たなビジネスが生まれた。捨てたいモノを持つ人とそれが欲しい人とを繋ぐアプリである。
いらなくった家具、服、電化製品などなどを無料で欲しい人に提供、または物々交換ができるという優れたアプリなのである。ある人には不要なモノがそれを必要とする人の手に渡る。
もちろん、中には、金銭のやりとりが生じるシステムなども存在する。
引っ越しや遺品の片付けに困ると人は無料で非営利団体に寄付する。そして、それら遺品や不必要な物は量り売りされていく。だいたいどれも1ユーロから200ユーロが相場だろうか。
とある団体はボルドー近郊にこれに関連するような「リサイクル村」を作った。そのままの状態で売られているものもあれば、ボランティアによって修理されたり、改良されたりして…。つまり「アップサイクル」された電化製品、家具、服などがずらりと並んでいる。
リサイクル村、週末は人々で賑わっている。この習慣はとっても面白い。
一方、新型コロナウイルスの影響で、フランス人は、インターネットショッピングをする機会が増えた。これは日本も一緒であろう。購買力の低下が顕著になり、一方で、環境問題に敏感になり、人々は、消費の仕方を考え直す機会を得ることになる。
そのような状況を逆手にとって、ここに来て流行りだしたのが個人と個人を繋ぐサイトだ。
様々な品物を、破格の金額で個人間で売買する。コミッションはゼロ、今のところ所得税に引っかからないので一般人には大人気。リサイクルにもなって値段交渉もできるので、ちょっとケチなフランス人にはうってつけである。
ただ、そうして手に入れた家具は傷んでいたり時代遅れだったりする。もちろん、日曜大工が好きな人なら、自分で直すのも楽しいだろう。しかし、苦手な人のために、アップサイクルの団体が代わりに修復し装飾を施す、という仕組みだ。誰かの「古い」モノが自分好みの「新しい」モノになるのだから、経済的であり、環境に優しく、これは実にユニークなシステムではないか。
アップサイクルの代表的な例は荷役用のパレット(木箱)である。
お店の前でよく捨てられているので簡単に手に入るし、新品が欲しければインターネットで安く買える。作り方やアレンジの仕方はネットで簡単に探すことが出来る。道具とやる気があれば日曜大工の感覚で仕上げることが出来る。
もしも、自信があればさらに素敵な家具も作れる。元の状態の写真がないのが残念だが、こちらをご覧頂きたい。50ユーロの食器棚がおしゃれな洗面台に大変身したのだ!
まず、汚れと傷を目立たなくするために家具を丹念に磨く。さらに湿気から守るために特殊な溶液を塗りマットな光沢をつける。そして、適当な長さに切り取られた木の板と洗面台を家具に乗せて蛇口を取り付けると、この通り、実に素晴らしい、新品以上の出来栄えである。
鏡の額縁には丁寧に塗料が塗られてある。
自分で修復をすることでモノの大事さを再認識することが出来るし、新たに蘇った、いわゆる新品の商品になるので、新しい所有者は大喜び。
まだ使えるモノを捨てるのは、実に勿体ない。このアップサイクルという運動、モノがあり溢れた今の時代に消費社会や環境問題を考え直す一つのきっかけになっていることは間違いない。(ま)