欧州最新情報
パリ最新情報「喜劇作家モリエール、今年の1月に生誕400年!」 Posted on 2022/01/16 Design Stories
フランスには子供から大人になる間に必ず読むべきとされる作家や詩人、劇作家の本が日本以上にある気がする。
そしていつの時代もそのトップに君臨しているのが「モリエール」だ。
“モリエールの言葉“=“フランス語“という図式さえあるくらい、モリエールは誰にも有無を言わせないフランスの国民的作家。
イメージとしてはイギリスのシェイクスピア、日本の夏目漱石かもしれないが、さらに一癖も二癖もある…。 「人間嫌い」「ドン・ジョアン」「才女気取り」など、タイトルだけでも聞いたことがあるだろう。
1622年のブルボン朝時代に生まれた彼は、今年生誕400年。
したがって今年のフランスではモリエールにちなんだイベントが盛り沢山。
誕生日は1月15日。
17世紀後半に大活躍した古典主義(=気品や秩序、調和を多く語る)の喜劇作家モリエールは、パリで生まれ、リヨンで法律を学んで弁護士の資格を持ち、裕福な父の王室付きの内装家業を継ぐはずが、全てを投げ打って(恋のせいという説も)20代で劇団を結成。
しかし鳴かず飛ばすの数年が続き、借金により投獄もされる。
その後、十数年巡業で、喜劇作家、役者として鍛えられ、 1658年に大喝采でパリで迎えられる。
魅力を増した彼の作品群は、モリエールの劇団をフランス一のトップ劇団にした。
作品の主役を演じるのもモリエールであり、彼の演劇はまた喜劇役者として当時並ぶ者のない彼が演じたからこそ傑作となり、太陽王ルイ14世をも魅了して、たびたび宮廷に招かれ、庇護された。
とはいえ、お上様や貴族たちに媚びていないのが、モリエールが当時も今も多くの人々に愛される理由でもある。
彼の劇は笑いにメッセージがある。
罠のように社会批判が仕込まれているのだが…いや実際はその罠にはまりたくて人々はモリエールを観たり読んだりする。
なぜならその罠に落ちながら、私たちはふと人生を考えさせられるから。学びがあるのだ。
17世紀同様、現在に至っても、人々は馬鹿笑いしたあと、劇場を出ながら、または本を閉じながら、思わず誰かを思い浮かべたり、身を正す。
偽善、不寛容、気取りの滑稽さetc…人間の本質はいつの時代も変わらないもののようだ。
1673年2月「病は気から」を演じきり、舞台で倒れるようにして自宅に運び込まれ逝ったモリエール。
たった51歳で人生の幕を閉じたが、彼の喜劇の幕は彼無くとも開き続ける。
今年フランスで観られる、コメディ・フランセーズを始めとする劇場での彼の作品は数えきれず、映画もあり、テレビやラジオでの特集番組等々もたくさん組まれている。
どれもモリエール好き、フランス文学好き、フランス史好きをわくわくさせるものだ。
フランス語が得意でない向きでも、大いに楽しめるのは展覧会。
フランス国立図書館との協力によりいくつか違ったテーマで今後開かれる予定だが、それとは別に現在行われているのは、ベルサイユのエスパス・リショードでの「Molière, la fabrique d’une gloire nationaleモリエール 国の栄光のファクトリー 」(4月17日まで Espace Richaud 78 Bd de la Reine, Versailles 水〜金曜12h à 19h, 土・日曜 10h à 19h)。
フランス住まいであれば、ぜひ足を伸ばしてみたい展覧会である。
日本在住の方はこれをきっかけにモリエールの本を開いて見るのはお勧めだ。
400年前のフランスがぐっと近くなる。
(ア)