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パリ最新情報「ミスフランス、応募資格を大幅に変更へ。ママの代表も誕生!」 Posted on 2022/06/29
ミスフランスは、1920年に始まったフランスを代表するミス・コンテストである。
過去、ミスフランスはミスの敬称が示す通り“独身女性の美”を競うイベントであった。
しかしそれがいささか差別的であるとして、2022年より選考基準が大幅に変更された。
これまでは身長170cm以上、未婚、子供を持ったことがない、25歳以下、フランス人もしくはフランスに帰化した女性のみに応募資格があった。
ミスフランス委員会は今年よりそれを撤廃、身長170cm以上、フランス国籍のみを基準として設定したのである。
これにより、6月にフランス各地で行われたミス・コンテストではさまざまな背景を持つ女性が入賞した。
パリでは史上初めてトランスジェンダーの女性、アンドレア・フレさんが2位に入賞し、アルザスでは歯科助手で3歳の子供の母親であるヴィクトワール・ルシュロさんが1位に輝いた。
彼女たちは年末に行われるミスフランス・コンテストに地方代表として出場し、優勝者は2023年フランスのシンボルとなる。
ただミスフランスに待っているのは一年間に及ぶ過酷な業務だ。優勝者は出身がどこであれパリ市に住まなければならず、朝の8時から深夜まで毎日働かなければならない。
主にSDGsをはじめとする社会問題に取り組むというが、アルザス代表のヴィクトワール・ルシュロさんはこれに疑問を抱いているという。
彼女は、ミスフランスの王冠と母親業を両立させることは「物理的に難しい」と語る。
そしてミスフランス委員会が仕事と家庭の両立が可能であることを証明したいのであれば、このような過剰労働を少しでも緩和させなければならない、とも述べた。
フランスではしばしば「子供を持ちながらも第一線で活躍し、年齢を超えて輝く女性」にスポットライトが当たる。
しかし裏を返せば、内面・外見・行動とそれぞれの美を一生涯かけて磨いていく必要性があり、時としてその理想像は女性を疲弊させてしまう。
仕事と家庭の両立は仏女性誌でも普遍的なテーマとして扱われている。
既婚(パックス含む)女性であれば働いて子供を持って、なおかつ女も忘れない自分…というのが理想とされているのだが、一方でフランス女性はスーパーウーマンでも何でもない、という意見が多方面で上がっている。
実は保育園が足りなかったり、良いベビーシッターが見つからない、というのはパリジェンヌに共通する悩みだ。
シングルマザーへの公的補助もフランスは手厚いのかと思いきや、「ちょっと収入が上がったらすぐに援助が打ち切られる」などシビアな側面もある。家事に積極的なイメージのあるフランス男性も、実は「言ったらやる」がほとんど。
今フランスでにわかに盛り上がっているのは、“そうじゃない方の自分”にスポットライトを、ということである。
つまりスーパーウーマン至上主義を廃止し、仕事と家庭の両立をユートピア化しないことを目指そうというものだ。
仏紙LA TRIBUNEは、フランス人のおよそ6割が仕事と家庭の両立を「試練」と感じていると指摘、さらには試練に耐えられなかった自分を責めないようにと注意喚起した。
何よりも出来ないことには「ノン」と声を上げることが重要だとも述べている。
そういった意味では、アルザス代表のヴィクトワールさんがはっきり「物理的に難しい」と発言した意味は大きい。
ひと昔前は美の追求に焦点が当たっていたミスフランスだが、これからは女性の発信の場へと変わりつつある。
今回は、代表に選ばれた“その後”にも注目の集まるコンテストであった。(オ)