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パリ最新情報「フランスで愛される秋の果物、ミラベルとは?」 Posted on 2023/10/08 Design Stories
秋が深まり、フランスのスーパーでは季節の果物がたくさん並ぶようになった。
洋梨、ブドウ、栗、プルーンなどが青果コーナーのセンターに置かれており、盛況だった夏の果物からバトンタッチを果たしている。
その中で目立つのは、日本でほぼ見かけることのない「ミラベル(mirabelle)」という可愛らしい果物だ。
ミラベルとはスモモの一種で、梅ほどの大きさを持つ、甘くて美味しい秋の味覚である。
フランスでは約8割が東部ロレーヌ地方で生産されていて、収穫時期が8月中旬から6週間程度と非常に短いのが特徴。
栄養価も高く、ビタミンA, B群・ミネラル・食物繊維が豊富で、フランスでは「シニア世代の理想的なおやつ」とも言われている。
またミラベルは残留農薬が最も少ない果物の一つとしても知られている。
確かにその皮部分には白い粉のようなものが目立つが、これは化学処理によるものではなく、自然の保護ベールであり新鮮さを保証するものだという。
果肉がとてもジューシーなため、ミラベルは生食に一番適している。
しかし一度皮をむけば冷凍保存も可能で、フランスではタルト、クラフティ(タルトに似たカスタードケーキ)といったスイーツによく利用されるほか、ジャムのフレーバーとしても人気を博している。
フランス料理とも相性が良く、この時期は鶏肉の煮込み料理などによく用いられる。
地域によってばらつきはあるものの、1キロあたり3ユーロ(約420円)から9ユーロ(約1260円)と低価格なのも魅力的だ。
ただ今年は、夏の猛暑で収穫時期が7月末からと非常に早かった。そのため9月も下旬になった今ではミラベルも旬の終わりを迎えている。
また熟すのが非常に早く保存がきかないため、フレッシュなミラベルは他国への輸出はあまりなく、ほとんどがフランス国内で消費されている。
※杏にも似た味のミラベル・ジャム
高い栄養価と価格の安さから、秋のミラベルはフランス人に広く愛される果物となっている。
しかしミラベルはフランス発展の歴史も一部担っていた。
果実自体は15世紀にはフランスに伝わっていたというが、本格的な栽培は19世紀末から。
理由はその頃の疫病で深刻な被害を受けたブドウ畑が、すべてミラベル農園に変更されたことによる。
さらに第一次世界大戦後にはミラベル農園をきっかけに仏東部の経済が発展していったという背景もあり、フランス人にとってのミラベルは実りや再生を表す果物でもあった。
※ブドウも旬を迎えたフランス
初秋の風物詩であるミラベルも、そろそろ時期の終わりを告げている。
ただこの短い期間では、特設コーナーを作るスーパーがあったり、ミラベル・タルトを期間限定で置くパティスリーがあったりと、いかにミラベルが愛されているかを再確認することができた。
10月にはイチジクやナッツ類のほか、フランスで人気急上昇中の柿が店頭に並ぶため、ミラベルに代わって楽しみに待ちたい。(せ)