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パリ最新情報「春を先取り!パリの花屋さんに並び始めたミモザ」 Posted on 2022/01/26 Design Stories
まだまだ寒い日が続くパリだが、花屋さんの軒先には黄色くて可愛らしい花「ミモザ」が並び始めた。
ミモザは春を告げる「冬の太陽」と呼ばれる花。南仏のコートダジュール地方では1月中旬から咲き始める。
ヨーロッパでは、明るいミモザの黄色は「太陽」「黄金」を象徴するもので、グレーがかった冬のフランスに小さな幸せを運んでくれる。
おそらく、フランス女性が最も愛する花の一つといっても良いのではないだろうか。
パリには花屋さんが多い。駅前で一輪のバラを売る行商さんから、センス抜群のカフェ・フローリストまで、何気なく歩いていても美しい花をあちこちで見かける。
誰かにプレゼントするのだろうか、夕方日が沈むころにパリジャンが花束を持って帰路を急ぐ姿も、ちょっとしたパリの風物詩である。
バレンタインデーには男性が女性へバラの花束を贈り、5月1日には「愛の花」スズランを贈り合い、はたまた恋人との仲直りにも花は力強い味方となってくれる。
フランス人にとって愛すべき花屋さんなのだが、パリのフローリストに「花はもらうと嬉しいが、あげた本人もその場で幸せになるんだよ」と言われ、なるほど素敵な言葉だな、と思ったことがある。
ラテンの国フランスでは、はっきりと想いを言葉にして伝えると思われがちだが、なかには言いにくいことを言えずにいる人もいる。花はそんな自分の背中を後押ししてくれる、サポーター的存在なのだ。
そして、ミモザもまた大切な人に贈られる。
少し日本と違うのは、それが「何気ない日に」「恋人だけではなく日頃お世話になっているお母さん、おばあちゃん」にプレゼントすることだ。
フランスにおけるミモザは「私がどれほどあなたを愛しているか、誰にも分かりはしない」という意味が込められていて、それを受け取った女性はほっこり、子供や孫からのギフトに笑顔になる。
ということで、フランス人にとってミモザは、春を告げる花であるほかに、ちょっとした幸せをもたらしてくれるとても縁起の良い花なのである。
ミモザの鑑賞シーズンは1月中旬から3月くらいまで。南仏にはボルム・レ・ミモザ(Bormes les Mimosas)という小さな村を起点とした「ミモザ街道」と呼ばれる場所があり、この期間には毎年恒例でミモザ祭りが行われるほどだ。
コンサートやミモザパレード、ミモザ女王コンテスト、ガイドと一緒にミモザを鑑賞するツアーなど、盛りだくさんのイベントで春の訪れを祝う。
また、ミモザが愛される理由の一つにその芳香がある。
みずみずしくほのかに甘い香りがするミモザは、香水の原料としても重宝されてきた。
ポンポン状の可愛らしい姿に、優しい香り。春の温かい陽だまりのような雰囲気にフランスの一流メゾンも惚れこみ、南仏グラースにてミモザ畑を所有する企業もあるそうだ。
ほかにも、フランスでは花をボンボン(キャンディ)にしてお茶菓子にする習慣がある。
スミレの砂糖漬けはその代表格で、ミモザも同じようにお菓子に生まれ変わることがあるという。
食の世界でも白アスパラのミモザ風、ミモザカクテルなどが生まれ、幸せを運ぶ花が与えた影響はどこまでも大きかった。
ミモザはオーストラリア原産とのことだが、1800年代にフランスに渡ると、人々はまだ寒い冬に、鮮やかなイエローの花を豪快に咲かせる姿に感激したそうだ。
快晴の真っ青な空には、ミモザの黄色が本当に良く映える。
しかし、パリのグレーの空にミモザを飾ると、そこはかとない情緒が現れてさらに良い。
厳しい寒さはもう少し続きそうだが、ミモザを愛でて春の訪れを楽しみに待ちたい。(内)