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パリ最新情報「バルニエ首相、就任からわずか2カ月半で辞任。揺れ動くフランスの行方」 Posted on 2024/12/07 Design Stories
2024年12月5日、フランスのミシェル・バルニエ首相が総辞職を発表した。就任から2カ月半、フランス下院で内閣不信任案が可決されての出来事だった。
ここ数か月の政治情勢を考えれば、ある程度予測された動きだったかもしれないが、それでも辞任という結果はフランス社会に新たな波紋を広げている。
あまりにも早い辞職のニュースは、フランス国内外で大きく報じられた。5日20時にはマクロン大統領がテレビ演説を行い、数日以内に後任の首相を任命すると述べた上で、自身については「2027年の任期満了まで職務を全うする」と表明している。
バルニエ首相はEU交渉の立役者として知られた政治家で、フランス政界の重鎮として2024年9月に首相の座に就任した。当初、多くの国民がその安定感ある存在に期待を寄せていたが、一部では「今回も短命に終わるのではないか」とも噂されていた。
それほど経験豊富なバルニエ氏がリーダーシップを発揮できないまま辞任に至った理由は、2025年度の社会保障に関する予算案を強行採択したことに起因する。
この決定は野党の猛反発を招き、ついに内閣不信任案が可決される事態となった。なお、フランスで内閣不信任案が可決されたのは、実に1962年以来の出来事である。
※辞職したミシェル・バル二エ氏。
https://x.com/michelbarnier/status/1864389384885194827?s=51
1958年のフランス第五共和制発足以来、もっとも在任期間の短い首相として歴史に名を刻むことになったミシェル・バルニエ氏。背景には、7月の国民議会選挙で最大議席を獲得した左派連合「Nouveau Front populaire(新人民戦線、以下NFP)」と、マリーヌ・ルペン氏率いる極右政党「Rassemblement National(国民連合、以下RN)」による、マクロン政権への根強い反発がある。
とくにマリーヌ・ルペン氏に関しては、先の国民議会選挙以来、フランスの財政政策に多大な影響力を持つようになったと注目されている。次期首相は数日内に決定するというが、誰が任命されるにせよ、今後のフランス政治においてはルペン氏の意見を無視できない状況になるのではないだろうか。
今回の倒閣には、フランスの人々もため息交じりだ。2022年以降の短期間で首相が3度も交代している。事実、12月5日に行われた調査では、72%のフランス人が「世論を反映しない政治」と批判したという。一方で、バルニエ氏の辞任については54%のフランス人が「満足」と回答しており、35歳未満の世代ではその傾向が顕著だった(Sondage ELABE pour BFM TVより)。
このように、マクロン大統領が7月に決定した解散総選挙以降、フランスの政治危機はさらに深刻化している印象を受ける。まずは次期首相の決定を待ちつつ、今後の展開を注意深く見守りたい。(お)