欧州最新情報
パリ最新情報「パリメトロ、リサイクルプロジェクトを始動!サステナブルな地下鉄へ」 Posted on 2021/12/04 Design Stories
パリ交通公団(RATP)はこの度、物に第二の命を吹き込む「廃品オークション」を初めて始動させた。
これは70年以上の歴史を持つパリ交通公団でも初の試みとなる。
出品対象は、これまでにリニューアルや破損などで撤去されたメトロの看板、路線図、電光掲示板、プラットフォームの椅子、壁のタイルなど。
なかには本物の落下防止ドアや改札機まで登場し、合計215ロットのマニアックなオークションが開催された。
価格は20ユーロ~3000ユーロまでのものが揃い、11月26日~12月3日までオンラインにて競売にかけられた。
オークション終了時に集められた利益は、ホームレスの人々のための宿泊施設と支援センターに全額寄付されるという。
パリは東京以上に地下鉄網が張り巡らされている都市で、少し歩けば必ずメトロの駅が見つかる。路線は現在、全部で16路線。早朝から深夜1時半頃まで運行し、パリジャンの主要な交通手段となっている。
パリ市民にはもちろん、旅行者にもお馴染みのメトロだが、便利という声よりも「汚い」「危ない」といった意見が多いのが現実だ。
パリ首都圏のメトロや電車構内では、年間1万トンのゴミが収集され、そのうち250トンがリサイクルされているという。
そういったマイナスイメージを払拭するため、パリメトロでは廃材を利用したコンテンポラリーアートの展覧会などを定期的に開催し、ゴミ分別の有用性を訴えてきた。
今回の廃品オークションもまた、リサイクルを啓蒙する活動の一つと言える。
また、今年9月にパリメトロは「切符」を削減する方向性を決定した。
その第一弾として、まずは紙のカルネ(10枚綴りの回数券)が2022年3月に完全に廃止されることになる。
切符の裏面にある磁気は、スマホや鍵が近くにあるとすぐダメになり、自動改札口で通らなくなってしまう。
そのせいか、年間500万枚ものチケットの磁気がなくなり、窓口で再度磁気化するという処理が必要だった。当然ゴミは増えるし、10枚のうち1枚は未使用のまま捨てられるというもったいない現象も起きていた。
そういった大いなる無駄を省くため、そして改札機付近のスムーズな動きを確保するため、
紙製の「切符」が廃止される方向だという。
10月14日からはすでに、パリ市内100か所の駅の券売機で回数券の販売が終了している。
切符の廃止後は、現在のナヴィゴ(PASMOのようなもの)と同じく、プラスチックのカード式になっているナヴィゴ・イージー(Navigo easy)を駅の窓口で2ユーロ(約260円)で購入し、券売機などでチケットをチャージする。
これは旅行者も購入可能で、地下鉄のほか、市バス、シャルルドゴール空港へ乗り入れるロワシーバスでも使用することができる。
コロナ後にパリ旅行を計画されている人は、回数券の利用がカード式に移行となるので注意が必要だ。
回数券廃止のことを含め、手動式のドアが減ったり、紙の広告が減りデジタルの画面の広告が増えたりと、古さが残っていたパリメトロもどんどん近代的になってきている。
2024年のパリ五輪を意識しているのは間違いないが、これを機に綺麗でサステナブルなメトロに生まれ変わっていくだろう。
今回の廃品オークションはややマニア向けのユニークな取り組みだった。しかし、市民にとっていちばん身近なパリメトロがリサイクルを啓蒙する事の意味は大きい。
ストライキや衛生面など、たびたびそのマイナス面がクローズアップされてしまうRATPだが、今後のエシカルな活動に期待したい。(内)