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パリ最新情報「マルモッタン・モネ美術館で開催中の “ネオ・ロマンティック” 展が見逃せない理由」 Posted on 2023/03/10 Design Stories
パリ16区の閑静な住宅街にあるマルモッタン・モネ美術館。芸術史家でアートコレクショナーであったポール・マルモッタン氏の元私邸を改造した小さな美術館で、周囲のオスマニアン様式のアパルトマンに溶け込んだ瀟洒な佇まいも印象的だ。
第一帝政時代のなごりを今に残した館内には、マルモッタン氏の幾つものコレクション…第一帝政最盛期の芸術作品や、モネとモリゾーを主とした印象派作品が展示され、世界から人々がやってくる。印象派絵画好きな日本人も後をたたないそうだ。
Eugène Berman
Sunset (Medusa) 1945
© Raleigh, North Carolina Museum of Art
ここで3月8日から6月18日まで開かれている特別展「ネオ・ロマンティック Néo-Romantique」は、そんな印象派好きのみならず、アートファンに見逃せないものになっている。サブタイトルは「モダンアートの忘れられた時1926年〜1972年UN MOMENT OUBLIÉ DE L’ART MODERNE 1926-1972」。
まさに “忘れられていた” ここで見られる絵画たちは、輝くような美しさと深み、なぞなぞを仕掛けるような構図でどこまでも魅力的でありながら、多くが今日までこのように表だって展覧会に飾られることがなかった。
第一展示室に入った瞬間に、驚きがある。やっと表に出られ、思い切り人々の前でその表情を堂々と輝かせる作品たちに、新鮮さを感じ、不思議な共感を覚える。抽象芸術に疑問を投げかけ、具象に回帰するムーブメントの中で生まれた初期ポストモダン作品群で、プライベートコレクションやパブリックコレクションから今回100点近くが集められており、どれも珠玉だ。
なぜ、今まで表に出てこなかったか?
それは、彼らの時代がピカソ全盛期と重なるからだ。ピカソなのみならず、ピカソの周りにいる画家たち、もしくわピカソと同じ流れで作品を作り出していた作家たちが、当時は世界中から注目を集めていた時代。ここにいる画家たちは、その時代の主流にいなかった。彼らは彼らの道を歩み続けていた。
Pavel Tchelitchew
Nu 1926
© Maxime Melnikov
主な画家の名前はフランス人のクリスチャン・ベラルドChristian Bérard (1902-1949), ロシア人のパヴェル・チェリトチュウPavel Tchelitchew (1898-1957), ユージェンとレオニド・ベルマンEugène (1899-1972) et Leonid Berman (1898-1976)、そしてオランダ人のクリスチャンス・トニーKristians Tonny (1907-1977)。聞いたことのない名前ばかりではないだろうか。
彼らは1920年代に、まずパリで集まった。そしてアメリカ、イギリス、イタリアなどの独自のアートムーブメントに参加。素晴らしい“束の間の芸術”=舞台装飾や衣装なども制作しており、その数々も展示されている。それらイマジネーション溢れる作品たちは、ピカソやシュールレアリズム、具象画と、“生きた芸術”=劇場芸術が、繋がりをもつ橋渡しになったとも考えられている。
サー・フランシス・ローズの「共にL’ensemble」(写真3)は、現在した友人たちを描いたもので、クリスチャン・ベラルド、パヴェル・チェリトチュウ他、フラシス・ピカビアやジャンコクトーもいる。
この展覧会は、そのまま常設展が見られるのも嬉しい。のんびりと時間をとってぜひ。( ア )
Sir Francis Rose
L’Ensemble 1938
© Estate of Sir Francis Rose/photograph © England & Co