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パリ最新情報「フランス大統領選支持率1位、 極右政党ルペン氏に有罪判決、市民の声を聞いた!」 Posted on 2025/04/02 Design Stories
パリ裁判所は3月31日、フランスの次期大統領選に向けた政治の流れを大きく左右する判決を下した。それは、フランス極右政党の前党首であり、次期大統領の有力候補とされていたマリーヌ・ルペン氏に対する有罪判決だった。
※マリーヌ・ルペン氏。Le Parisien Xより
https://x.com/le_parisien/status/1906660737675661486?s=12
公金横領の罪で有罪判決を受けたルペン氏。裁判所は彼女に4年の禁固刑と、5年間の公職停止などを言い渡した。この判決が確定すれば、控訴審で逆転勝訴しない限り、2027年の大統領選に立候補することはほぼ不可能になる。ルペン氏は、次期大統領選ではマクロン氏が立候補しないため“もっとも有力な候補者”として注目されていたのだ。
ルペン氏が率いる極右勢力は、かつてのフランスで「過激な存在」として敬遠されていた。ところが、ここ数年でその流れは大きく変わり、他のヨーロッパ諸国と同様に、極右政党が勢力を増している。ルペン氏はまさにその象徴的な存在で、戦後のフランス政治においても異例の台頭を遂げていた。
年金改革にはじまり、昨今の移民問題・経済不安、ウクライナ情勢への懸念……と、重めの社会問題を抱えるフランス。こうした課題が山積みのなか、フランス国民の政治不信はピークに達しつつあるようにも見える。それもあって、ルペン氏、および彼女が率いる極右政党に期待を寄せる人々も増えている。では今回の有罪判決について、現地フランス人は率直にどう思ったのだろうか。さまざまな人々の声を聞いてみた。
「お金を横領しているのは彼女だけじゃないと思う。サルコジも裁判にかけられたし、よくあることです。しかし客観的には、有罪判決を受けた後、極右政党の人気はますます世論調査で高まっているのでは? それに大統領選も近づいているし、私は極端すぎてルペン氏を支持しないが、一部の人にとっては有罪判決であっても関係ないのかもしれない」
こう答えてくれたのは、フランス地方に住む60代の女性。彼女が言うように客観的な意見だったが、たしかに3月31日に行われた世論調査では、フランス人の66%が、極右政党にとって「ハンディキャップにはならない」と考えていることが分かっている。さらに、
次期大統領にジョルダン・バルデラ氏(極右政党「RN」の現党首)を支持するという意向を示したフランス人は、実に36%に上った。また女性が「極端すぎる」と言った理由は、ルペン氏の政策「移民の受け入れ削減」に起因しているという。
※Toluna Harris Interactive、Odoxaの調査。18歳以上のフランス国民1,162人が対象。
一方、パリに暮らす30代の男性は、今回の判決について以下のように述べている。
「まず、私はルペン氏含むいまの政治家たちに賛同していない。今回も含めて汚職の話には飽きたし、現在のフランス人のあいだでは、自分が“右派”か“左派”かはっきりと分かれなければならない雰囲気がある。派に関係なく、皆の生活をただ良くしようという場合は、一体誰を支持すればいいのか。移民削減など一部の考えには自分も賛成だが、かといって極右を支持しているわけではない。今回の一件で政治不信がますます強まってしまった」
と、政党に関係なく政治全体に対する不信感を吐露した。またフランス地方に住む20代の女性は、「ルペンは(不正した)他の人々と同様に起訴されるべきであり、罰を受けるべき。模範を示すことを国民に説くのであれば、まずは自分自身にそれを適用することから始めなければ」と、厳しく受け止めていた。
ルペン氏の有罪判決を客観的にかつ厳しく受け止める人がいるなかで、政治不信を募らせたり、“右派”か“左派”に分かれる現状そのものを問題視する人がいたのが印象的だった。2027年の次期大統領選はフランス国民にとって大きな節目となるが、今回の判決によってその風向きが変わったように感じられる。(大)