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パリ最新情報「フードロス対策が広がるパリのマルシェ、食材の『その後』を救う取り組み」 Posted on 2024/07/02 Design Stories  

 
パリでは、自宅から歩いて15分のところにマルシェがあると言われている。
その数は、合計で81カ所。それぞれに個性があり、露店には新鮮な野菜や肉、魚、チーズ、惣菜など、季節のさまざまな食材が並んでいる。
 

パリ最新情報「フードロス対策が広がるパリのマルシェ、食材の『その後』を救う取り組み」



 
フランスは、フードロス対策でイニシアチブを取る国のひとつだ。食べものの無駄をなくす取り組みに対してはとくに真剣であり、国と自治体、各家庭が一丸となってすすめている。

フードロスを減らすヒントは、マルシェにもある。
ここでは量り売りが基本なのだが、一部のマルシェでは閉店間際に、熟れてしまった青果を手ごろな値段で販売することがある。たとえば熟したトマトはソース用に、チェリーはジャム用にと特別な価格で提供してくれるのだ。魚屋や肉屋でもアイデアのおすそ分けがあるため、フードロスに関する興味と知識が一気に深まる。
 

パリ最新情報「フードロス対策が広がるパリのマルシェ、食材の『その後』を救う取り組み」



 
実は、パリのマルシェは売れ残った食材のほとんどを、堆肥やバイオガスにリサイクルしている。対象は生花や野菜、果物などの生もの。2016年から始まった世界初の法律「食品廃棄禁止法」に基づいていて、パリ市はこれをマルシェにも導入した。

廃棄物はパリ首都圏の「Syctom(シクトム)」という業者によってバイオガス工場に送られたあと、ガスは燃料として、副産物はバイオ液肥として再利用される。
また2023年からは、マルシェに誰もが利用できる共同のコンポスター(生ごみ回収BOX)が設置された。24時間稼働していて、人々は家庭で出た生ごみをここへ投入することができる。
 

パリ最新情報「フードロス対策が広がるパリのマルシェ、食材の『その後』を救う取り組み」



 
マルシェにはフードバンクの精神も根付いている。フードバンクとは、流通できなくなった食品を困っている人々に届ける活動のことだが、そもそもフランスはフードバンク発祥の地だ。1980年代から始まった草の根的な活動が、今では国から支援を受けるほどになっている。
パリの一部のマルシェでは、そのような団体と提携しており、1日平均で約40kgの食品を回収するそうだ。食品は学生や必要な人々に届けられるほか、加工専門の業者に託されることもあるという。

2023年、こうして回収された食品はリサイクルで767トン、フードバンクで378トン、合計1145トンにもなった。それほどの食材が救われたと思うと、やはりマルシェにはフードロス解消への学びが詰まっていると言えるだろう。
 

パリ最新情報「フードロス対策が広がるパリのマルシェ、食材の『その後』を救う取り組み」

※パリには現在、100%オーガニックのマルシェが4つある。

 
フランスの人々はこうした活動を「当たり前」のように感じているという。
直接口にするもののクオリティに対しては厳しいが、その後についても責任をもって考える。また、分かち合いに寛容で、困っている人々には遠慮なく手を差し伸べるという一面もある。このようにフランスが美食の国と呼ばれる裏には、フードロスに対する真摯な取り組みが存在していた。(ち)
 

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