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パリ最新情報「愛の南京錠、完全撤去へ。モンマルトル美化計画の一環で」 Posted on 2022/09/13 Design Stories
セーヌ川に架かる橋ポンデザールから、愛の南京錠が撤去されて7年が経つ。
当時の重さは45トンにも上ったといい、橋の安全と景観が損なわれるという理由からパリ市が除去するに至った。
しかし次に恋人たちが向かったのは、パリ18区・モンマルトルの丘である。
現在ではサクレ・クール寺院前のフェンスを中心として、びっしりと南京錠が取り付けられている。
数万個とも言われるこの南京錠だが、パリ18区の区長は9月8日、これを2023年に完全に撤去すると発表した。
18区は、「まず哲学的に愛とは鎖で縛るものではない」と前置きした上で「公共物を劣化させ、危険が伴う」と撤去の理由を説明。
撤去作業は2023年から始まり、パリ五輪前までには終了する予定だという。
またもう一つの問題は、サクレ・クール寺院の前に違法販売業者が居座っていることである。
愛の南京錠は寺院前にたむろする、こうした業者から手に入れなければならない。
価格は小さいもので5ユーロ(約700円)、大きいもので10〜15ユーロ(約1400〜2100円)となり、時には観光客の顔色で値段が変わるとのことだ。
この地域はバカンスが始まる前、エッフェル塔付近と同様に私服警官を動員しての大規模な摘発が行われていた。
これはパリ美化計画の一環であり、モンマルトルに代表される18区は特に力を入れている。
というのも、モンマルトルは世界遺産登録を狙う地域であり、その申請には街の美化が不可欠であるとされているためだ。
モンマルトルではすでに毎週日曜日・祝日の11時から19時まで、一部の道路が通行止めになっている。
しかし18区はこれを近々、完全に歩行者天国とする予定である。
以後はパリのリヴォリ通りのように、公共交通機関、タクシー、配送車、地域住民しか車で侵入できなくなるという。
サクレ・クール寺院を含むモンマルトル地区は、意外なことにまだ世界遺産ではなかった。
ただこの地域はロックダウン後は観光業に力を注いでおり、頂上付近では屋外レストランが設置されるなど、日々刻々と変化を遂げている。
年間では約1200万人がこの場所を訪れるというが、ネットフリックスドラマ「Emily In Paris」シリーズ以降ではさらに脚光を浴びるようになった。
確かに今のモンマルトルは大混雑している。週末は人でごった返しているため、頂上付近の細い道を歩けば通行人と高い頻度でぶつかってしまう。
そのためいくつかの通りが歩行者天国化というのは、世界遺産登録目的のほか地域住民の要望に答えるものでもあった。
ポンデザールから南京錠が撤去されたあと、恋人たちはモンマルトルへと向かった。
しかし2023年にはそれも完全に姿を消してしまう。
パリ美化計画が勢いよく進んでいる今、観光客を目当てにした違法な事業は次々と摘発されている。
2008年頃から15年ほど続いた愛の南京錠ブームも、今年で終了となりそうだ。(大)