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ロンドン最新情報「子供たちの失われた教育、そして日常を取り戻すために今やるべきこと」 Posted on 2021/06/03 Design Stories  

 
ワクチン接種の進展により、コロナウイルスによる死者数が大幅に減少しているイギリスでは、「コロナ後の日常」を取り戻す政策の一環として、子どもたちの教育に焦点が当てられている。
ヨーロッパ諸国で最も長引いた休校の影響により、特に貧困層の子どもほど学習の遅れが大きく、格差の広がりが懸念されている。
政府は2月にケヴァン・コリンズ氏を教育復興委員長に任命し、休校期間の失われた教育機会を取り戻すための長期計画を夏休み前に発表する方針を示していた。
しかし6月2日になって、人件費や教員養成のための費用など経費150億ポンドを試算したコリンズ氏に対し、政府が14億ポンドの予算を提示したことから、コリンズ氏が辞任を表明した。
1日には、コリンズ氏が報告書をまとめ、イングランドの公立学校では1日30分間授業時間を延長し、週35時間の授業時間を確保すること、恵まれない家庭の子ども500万人を対象に個人や少人数での補習やアート、音楽などの授業を行うことなどの提言を行い、ボリス・ジョンソン首相が検討していると「タイムズ」紙などが伝えたばかりだった。
コリンズ氏によれば、イギリスでは2020年の春から夏にかけて、また今年の初めの2カ月あまり、小学校から中学高校までが休校やオンライン学習に切り替わった。
合計で約23週間の教室での授業が行われなかったことで、生涯の生産性への経済的損失は少なくとも1000億ポンドに達し、対策を行わない場合は1600億ポンドに増大すると試算している。
 



ロンドン最新情報「子供たちの失われた教育、そして日常を取り戻すために今やるべきこと」

 
イングランドの公立学校では、学校によって1日の授業時間が異なっている。
ケンブリッジ大学教育学部のボーガン・コノリー教授を中心とする研究チームは、小学校からの授業時間の違いによりGCSE(16歳で受験する共通試験)の成績にどのような違いが出るかの追跡を行った結果、授業時間の延長だけでは失われた学習を取り戻す十分な効果はないと結論している。
コノリー教授は「ガーディアン紙」(5月28日付)の取材に答え、「失われた教育機会を埋め合わせるには、学校生活の内容をバランスよく見直す方が効率がよい」と説明。
さらに、メタ認知的学習、つまり「自らの学習を計画し、客観的にモニタリングし、評価する方法」を教えるべきだと主張している。

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長期にわたって学校生活が送れなかった子どもたちには、精神的な健康への影響も懸念される。
イギリス心理学協会はメディアの取材やS N Sを通して、「授業時間を延長するなら、その時間は遊びを通した学びや友だちとの交流、ウェルビーイングを促進する活動に当てるべきだ」と提言している。
B M J(英国医師会雑誌)ウェブ版に3月に発表されたケンブリッジ大学タスミン・フォード教授(児童青年精神医学)らの論文「パンデミック中の児童青年の精神的健康」は、パンデミックの長期的な影響はまだ明らかではないとしながらも、「政策立案者は、雇用や経済だけではなく、社会的・精神的な健康に関する教育の重要性を認識するべきだ。
“子どもたちは、私たちが自分では見ることのない未来に送る生きたメッセージ”であり、子どもたちの必要を満たし、次世代がコロナウイルスによって不当な損失を受けることのないようにしなくてはならない」と結論している。
 

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コロナウイルスによる長引く規制の影響で失業や収入源に悩む家庭が増える中で、チャリティー活動に自ら立ち上がったのが、マンチェスター・ユナイテッドのサッカー選手、マーカム・ラシュフォードだ。
5月27日にはサッカージャーナリストとの共著『君はチャンピオンだ(原題 You are a Champion)』の出版に合わせ、本を1冊も所有したことのない子どもたち38万3000人に本を届ける活動を始めた。
ラシュフォード選手は「パンデミック中に恵まれない子どもたちを救った」ことから昨年10月に大英帝国勲章のMBEを受勲している。
休校中に学校給食の代わりに行われていた貧困家庭の子ども向けの食費支給を夏休みに停止する方針を政府が示した際に、ラシュフォード選手は強力なキャンペーンでこれを覆させた。
著書では、自身が貧困家庭に育ちながら、精神力によってサッカー選手になった経験を綴り、夢を叶えるための方法を子どもたちに伝授している。(清)
 

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