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ロンドン最新情報「試行錯誤を重ねながら始まった、コロナ後の日常」 Posted on 2021/05/26 Design Stories  

 
イギリス政府が定めたロックダウン緩和計画によれば、ロンドンを含むイングランドでは早ければ6月21日に、ソーシャルディスタンスに関する全ての制限が撤廃され、ナイトクラブの営業が許可される。
ただし、ボリス・ジョンソン首相も記者会見で認めたように、さらなる規制緩和は今後インド変異株の拡大が抑えられることが条件だ。
インド変異株に対しては、アストラゼネカとファイザーの双方のワクチンの有効性が認められている。
イングランドでは今日から、ワクチン接種対象年齢が30歳にまで引き下げられた。
インド変異株の感染者が見つかった8つの自治体では拡大を抑える対策として、検査の拡充とともに、予約なしでワクチン接種が受けられる会場を設け、接種を急速に勧めている。
また、ロンドン西部のホーンズロー区の大規模接種会場では、18歳以上なら午後5時以降に余剰分があれば接種を受けられる特別措置を設けている。
政府は昨日、インド変異株が見つかっている8つの自治体について「仕事や教育などで必要な場合以外は、自治体の境界を超えた移動はしないこと」を求めた。
これに対して、事実上の地域別ロックダウンだとの批判が上がり、該当する自治体が共同で異例の反対声明を出したほか、地元選出議員からも批判が寄せられた。
政府はこれを受けて、移動の制限や、「念のため人と会うときは屋外で会うこと、(通常の1メートルではなく)2メートルの距離を取ること」は法的規制ではなく勧告であると発表した。
 

ロンドン最新情報「試行錯誤を重ねながら始まった、コロナ後の日常」

※バス停に掲示されたNHSによる「後戻りはやめよう」と題されたポスター。「不法のヘアカット」「オンライン・ショッピング」「ヴァーチャル・ハッピーアワー」の言葉が書かれ、それぞれ「不法の」「オンライン」「ヴァーチャル」に赤いばんそうこうが貼られている。
 



こうして、試行錯誤を重ねながら、「コロナ後の日常」は始まっている。
ロンドンを含むイングランドでは5月10日以来、コロナウイルス対策の規制が大幅に緩和されている。
パブやレストランの屋内営業が許可され、同居家族以外の人との「注意を払った上での」ハグが解禁になった。
パブは、屋内営業が始まった今も、テラス席の方が人気のようで、土曜日は昼間から満席になる。
5月下旬になってもロンドンでは最低気温が10度を切る日が続いているが、それでも客はダウンを着込んだまま、楽しげにビールを飲んでいる。
ただし、注文はテーブルで座ったままで、また飲食時以外はマスクをしなくてはならない。
カウンター越しに説明を聞き、ときには味見をしながらビールを選んだり、隣にいた人と酔った勢いでおしゃべりが始まったりした以前のパブの風景とは少し違う。
先頃、筆者のスマホには「年に1度の健康診断を受けましょう」というメッセージが来た。昨年は来なかったので2年ぶりだ。予約者が多いらしく3週間待ちで健康診断を受けた。
かかりつけ医(G P)の看護士は画面のカルテを見ながら「1回目のワクチン接種はしていますね。
2回目が済んだら、1週間後に111番に電話をすると、ワクチン証明書がもらえます。旅行の予定があればどうぞ」と教えてくれた。
ただし、NHSが発行するワクチン証明書は、旅行会社や行先の国で求められた場合に提示できる記録という扱いで、イングランド国内で公的な効力があるわけではない。
 

ロンドン最新情報「試行錯誤を重ねながら始まった、コロナ後の日常」

 



観光目的での海外旅行も、今月解禁になった。
世界の国を感染状況により信号のように「赤」「黄色」「青」の3色に分け、「青」の国なら、入国時に陰性の検査結果を提出する義務はあるが、検疫は必要ない。
現在「青」の国はポルトガルとイスラエルなどごく一部だ。
日本を含む「黄色」の国からの帰国者は、自宅などで10日間の検疫を行い、2日目と8日目に自己負担(検査機関により約100〜400ポンド)で検査を受ける義務がある。
変異株が猛威を振るうインドは「赤」で、帰国者は政府が指定したホテルでの検疫を行わなくてはならない。
インドが「赤」になったのは、近隣のバングラデシュやパキスタンよりも11日遅れの4月23日になってのことで、インド訪問を予定していたボリス・ジョンソン首相がインドとの関係を重視して判断が遅れ、インド変異株の拡大につながったとの批判が出ている。
筆者が日本人と知る人からは、「なぜ東京オリンピックを中止しないのか」と聞かれることがある。
昨日アメリカが日本への渡航中止を勧告したことは、イギリスでも大きく報道された。
BBCニュースのルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ東京特派員は、国内で東京オリンピックの中止を求める世論が高まっていることとともに、「日本にはガイアツという言葉がある」とし、外国が圧力をかけることで、オリンピック中止の判断に到るのではという期待があると解説している。(清)

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