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ロンドン最新情報「コロナ禍における 英国ワンちゃん事情」 Posted on 2022/01/06 Design Stories  

英国は犬に優しい国といわれる。
エリザベス女王と言えば、コーギー愛犬家。女王陛下は世界最古で最大のRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)の後援者でもある。
「愛犬の幸せと健康を守るために」英国のすべてのペットの飼い主には、ペットの福祉に必要なものを提供する法的義務がある。違反者は罰金と刑事責任が問われる。
また、ほとんどの公園でリード無しでの散歩が可能で、ロンドンの中心地にある広大な公園、ハイド・パークでは犬は自由に駆け回っている。
犬同伴で地下鉄、電車、ダブルデッカーバス、水上バス、タクシーに乗ることも出来る。

2020年から始まった新型コロナウィルスによるパンデミック、英国は3回もロックダウンがあった。
厳しいロックダウン中は1日1回の運動と犬の散歩が許可されていたため、毎日散歩に出かける公園では大勢の人や犬が押しかけて大混雑していた。
みるみるうちに子犬の数が増えていったのだ。
ところが、規制が緩和された2021年の7月を境に毎日来ていた家族連れやカップル、犬たちを少しずつ見かけなくなった。
仕事に戻ったり、地方や国外に引っ越ししたりしたのだろうか。あるいは何らかの事情で犬を手放したのかもしれない。

ロンドン最新情報「コロナ禍における 英国ワンちゃん事情」

<やんちゃな子犬、ジャーマン・シェパードのモーゼス(写真上)モーゼスの飼い主に集まる犬たち>



地球カレッジ

ステイホーム、リモートワーク、オンライン学習で、家族も個人も、突然家にいる時間が長くなった。
ペットに愛情を注ぐことで寂しさが紛れたり、ストレスが軽減されたりするだろう。
中には、ペットを飼うことの責任や覚悟を考えるよりも、衝動的に買うような飼い主も現れた。
Googleでは「子犬を買う」という検索が急増したそうだ。
そのため、英国最大の犬福祉団体ドッグス・トラストはスローガンを「dogs are for life, not just for lockdown 犬は命あるもの、ロックダウンの為のものではない」に変更した。
これは、クリスマスシーズンになると訴える文句「dogs for life, not just for Christmas 犬は命あるもの、クリスマスの為のものではない」を皮肉ったもの。
子犬を家に迎えることは、赤ちゃんがいるようなもので、躾やトイレトレーニングは想像以上に大変なのだ。

パンデミック発生以来、英国では合計320万世帯がペットを飼うようになったとPFMA(ペットフード製造者協会)は述べている。
現在、英国内でペットを飼っているは1700万世帯となった。
一番人気のペットは「犬」で、約150万頭が新しく購入さたと推測される。
現在、1200万頭以上の犬が家庭で飼われている。
新しい飼い主の半数以上が若い世代で、16歳から34歳。しかし、パンデミック時にペットを購入した人の約5%が、すでにペットを手放しているとの報告もある。

ロンドン最新情報「コロナ禍における 英国ワンちゃん事情」

<たくさんの人と犬で賑わう公園>



英国では犬の需要がかつてないほど高まった。
子犬の値段も上昇し、平均1,900ポンド(約30万円)近く(コロナ禍前の平均価格は888ポンド)。人気の犬種は3,000―4,000ポンドくらい(約50万円)で売られている。
英国での供給が需要に追いつかないため、子犬の輸入も急増したという。
しかし、RSPCA(英国王立動物虐待防止協会 )の福祉専門家によると、これらの子犬は劣悪な環境で繁殖され、幼いうちに母犬から引き離され、長期間輸送され、将来の行動に悪影響を及ぼすようなストレスを経験していることが多いそうだ。
飼い主も、気楽にネットで犬を検索し、一度も会わずに売買が成立するため、健康に問題があっても事前に知ることはできない。残念なことに、多くの子犬密輸業者や違法ブリーダーが、利益を得る結果となった。

この時期、犬の窃盗や誘拐事件も増え、フレンチブルドッグ、パグ、コッカプー、ラブラドールなど、需要の高い犬種が盗みのターゲットになった。
子犬に支払った法外な金額を取り戻そうと、子犬を違法サイトで売りに出した心無い飼い主も現れる始末。
ネットでの販売に失敗した飼い主が、野良犬を装ってシェルターに持ち込んだケースが報告されている。

ロンドン最新情報「コロナ禍における 英国ワンちゃん事情」

<人懐っこい子犬、チャウチャウのザンビ(写真右)>



今頃になって、なぜ、人々は子犬を手放すのか?  
それは、多くの飼い主の生活や環境が激変したことが要因だと考えられる。
コロナ禍で仕事を失ったり、引っ越しを余儀なくされた人もいる。
引っ越し先でペット不可となり、犬を手放すという悲痛な決断を下さなければならなかった人もいるのだ。

犬を飼えなくなるもう一つの理由は、飼う余裕(お金)がなくなったから。
餌代、治療費、ワクチン接種費、ペット保険代、薬代、グルーミング代、トレーニング代、シッター代、ドッグウォーカー代、老犬になると介護費だってかかる、これが十数年続く・・・。
こういった理由で子犬はシェルターへと持ち込まれるのだ。
英ガーディアン紙によると、ドッグス・トラストのレスキューセンターはどの犬舎も満床で、登録されているすべての里親が犬を引き受けても追いつかない状態。これはまだ始まりに過ぎないそうだ。

2012年に設立された「Borrow My Doggy 私のワンちゃんを借りて」もコロナ禍で人気となった。
年会費を支払うことで、犬の貸し借りを短期間できるサイトで、飼い主は犬のプロフィールを、借りる人は自己プロフィールを掲載する。
犬を買う前に一度借りてみるのは、衝動買いを防ぐのに効果的な方法ではないか。(ユ)

*英国の人口 2021年 6837万人
日本の人口2021年 1億2568万2千人
日本の犬の数 2020年 848万9千頭

*2022年1月5日 1ポンド=157円

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<雪が降ったハイド・パークで楽しむ犬たち>



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