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パリ最新情報「フランス人が一番好きな郷土料理とは?一位はブルターニュ地方のあの料理!」 Posted on 2023/03/09 Design Stories
2月25日から3月5日にかけて、パリでは「国際農業見本市(Salon de l’agriculture)」が開かれていた。
農業見本市とは、農業大国であるフランスで最も権威ある展示会で、国内から多くの農業関係者が集まり、期間中はさまざまなイベントも用意されている。
来場者に特に人気なのは、フランス地域別の食品を販売するコーナーだ。
食事やデザート、地ビール、ワイン、魚介類など各地域の特産品が販売され、フランス在住者も観光客も皆その場で舌鼓を打つことができる。
国際農業見本市には毎年フランス大統領や政治家も多く来場する。
今年は初日にマクロン大統領が顔を出し、水不足やインフレに悩む仏農家を激励していた。
なお2023年の来場者は61万人を超え、コロナ以前の人数に回復しているが、試飲会で羽目を外し出禁になった人が続出するなど少し波乱含みの会でもあったようだ。
さてそんな国際農業見本市は昨今の社会情勢を受け、年々「地産地消」、つまりメイド・イン・フランスの農作物にスポットを当てるようになっている。
ということで国際農業見本市の実行委員会は今回、興味深いアンケートをフランス国民に向けオンラインで開催した。
それは「あなたの好きなフランスの郷土料理とは?」という名目で、9つの料理をピックアップした投票式のアンケートだった。
選ばれた9つの郷土料理はこちら。
・そば粉のガレット(ブルターニュ地方)
・ブイヤベース(マルセイユ)
・シュー・ファルシ(キャベツの詰め物、仏中部オーベルニュ地方)
・ブリオッシュ・ソーセージ(ローヌ地方)
・シュークルート(ザワークラウトとソーセージの煮込み、アルザス地方)
・プール・オ・ポ(鶏肉と野菜の煮込み、ピレネー・アトランティック地方)
・カルボナード・フラマンド(牛肉のビール煮込み、仏北部)
・カスレ(白インゲン豆と肉製品の煮込み、仏南西部ランドッグ地方)
・プーレ・ヴァレ・ドージュ(鶏肉のリンゴ酒煮込み、ノルマンディー地方・カルヴァドス)
※仏南西部の郷土料理、カスレ。
1位に選ばれたのは、10万を超える投票のうち32%を占めた「そば粉のガレット」だった。これはブルターニュ地方のものに限り、そば粉のクレープのなかでも最もスタンダードな、ハムとチーズと卵を乗せて四角く折り返した「コンプレット(Complète)」だったという。
なおガレットは専門店がフランス各地に存在しており、すでに世界進出も果たしたブルターニュ地方の名品となっている。
— Le Télégramme (@LeTelegramme) March 7, 2023
2位は僅差で、アルザス地方のシュークルートだった。
この結果にはアルザス地方の出展者たちも大満足だったようだが、2022〜23年にかけて干ばつが起こったためキャベツの収穫量が減ってしまい、ザワークラウトの生産量が今年のアルザスでは例年より少なくなってしまうとのこと。
※シュークルート。キャベツを乳酸発酵させて作られている伝統料理で、15世紀頃から始まった。
そして3位は「シュー・ファルシ」というキャベツの詰め物。
これは日本のロールキャベツにも似ているが、フランスのものはより肉々しく豪快。
次いで、カスレが4位、カルボナード・フラマンドが5位、プーレ・ヴァレ・ドージュが6位という結果になった。
マルセイユの名物料理であるブイヤベースは、残念ながら今回のコンテストでは9位と最下位だった。
※プーレ・ヴァレ・ドージュ(Poulet Vallée d’Auge)。日本語に訳すと「鶏肉のオージュ谷風」となり、オージュの谷で収穫されるリンゴから作るカルヴァドスとシードルを使った料理。クリーム風味。
まだ肌寒さの残る3月だからか、今回ピックアップされた料理は煮込み系が多かった。
とはいえ、フランスの郷土料理には煮込みが確かに多い。オーブン料理もフランスの定番であるが、素材の味をコトコト煮込んだ料理はフランス人の魂の味であるらしい。
フランスの農家たちは今、エネルギー価格の高騰や干ばつなどで大変な思いを強いられている。
しかし彼らを助けるため、昔からある郷土料理に再注目し「フランス本来のガストロノミーを盛り上げよう」という動きが、最近のフランスでは目立ち始めている。(せ)