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パリ最新情報「別居が増え、結婚は先延ばし。より自由を求めるようになったフランスのカップル」 Posted on 2023/02/24 Design Stories
「フランスはカップル文化」。
この定説が、最近のフランスでは崩れつつあるようだ。
先週2月14日はバレンタインデーだったが、INSEE(フランス国立統計経済研究所)はこの恋人たちの日をきっかけに、フランス人カップルの意識の変化について興味深い結果を残している。
まず第一の傾向として、フランスでは別居を希望するカップルが年々増加している。
逆を言えば、フランス人が夫婦もしくは恋人として同じ屋根の下で暮らす割合は、1990年の64%から59%(2019年)に減少しているということだ。
またフランス人の晩婚化も進んでいる。
初婚の平均年齢は1996年では女性30歳、男性32歳だったが、2022年には女性37歳、男性39歳になったという。
しかしこの理由には、フランスのパックス制度(PACS、連帯市民協約、結婚と同様の権利が与えられる)がより一般的になっているためだと裏付けられる。
同じ屋根の下で暮らさない、晩婚化、これらは世界的な傾向でもあるのだが、パリ・シテ大学社会学名誉教授のフランソワ・ドゥ・シングリー氏は、フランス人の意識の変化をこう説明した。
「現代のカップルの多くは、愛とは自立だと考えている。ますます多くの人が自由を優先するようになり、また別々に暮らすことでそれぞれを尊重する。日常生活の疲弊から距離を置き、会話の減少や性的関係の減少を避けたいたいと願う人もいる」
さらにシングリー氏によれば、家、結婚、子供、これはカップルにおいての三大テーマであったが、こうした支配的なモデルはフランス人の若者(特に10代後半〜20代半ば)にとってもう魅力的ではない、ということだ。
別居については、女性の方が強く希望しているという結果も出ている。
ただ彼女たちはカップル関係をそのままに保ち、「ほどよい距離感」だけを求めているという。
というのは、家事を担っているのはフランスでもほとんどが女性であるため。
フランス男性は家事に協力的というイメージがあるが、2022年に発表されたINSEEの調査によれば、子供のいるカップルでは女性の45%が4時間以上家事に費やしているのに対し、男性は10%となっている。
カップル関係を保ちながら自分だけの家を持つことで、フランス女性はストレスに満ちた生活から解放されたいと思っているそうだ。
別居を希望する男性側の意見としては、女性の社会進出が大なり小なり影響している。
これは、職場に女性が多いという男性の間でよく見られる意見なのだそうだ。
彼らは女性同士のいざこざに巻き込まれてエネルギーを消耗するため、家では一人でリセットする必要があり、自分のペースを守りたいということだ。
こうした傾向はやはり若い世代の間で顕著に見られる。
しかし彼らの恋愛事情にも大きくは二通りあるといった印象だ。
まず一つは、もろもろの壁がなくなり(ヘテロセクシャルかLGBTQA+かどうか)、愛し方そのものが多様化していること。
そして、恋愛そのものをしない、といったセリバテール (célibataire、独身)謳歌組だ。
社会学者のシングリー氏もこれについて、「無神論者の多い現在のフランスでは、結婚や交際といった契約ごとは“小さなおまけ”に過ぎない」と読み解く。
一方で、シニア層のパートナー探しはかなりアクティブである。
これにも世代の価値観が現れているが、1950年〜60年代生まれのフランス人の間では社会的な関わり方として、「カップル単位でディナーやパーティーに呼ばれることが一般的」という観念があるためだ。しかしシニア層の間でも、ゴールとして結婚やパックスを求める人は少なくなっているという。(チ)