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パリ最新情報「シャンゼリゼ大改造計画。2030年までに『緑の大通り』へ生まれ変わる」 Posted on 2022/06/25 Design Stories
1670年に整備されたシャンゼリゼ大通りが今、大きく生まれ変わろうとしている。
凱旋門からコンコルド広場に至る、全長1880mのシャンゼリゼ大通り。
パリで最も華やかな場所で、その知名度は世界的に見ても高い。
ただ華やかさの裏側でいくつかの問題点も抱えている。
日常的に多くの観光客を受け入れるため、地元パリジャンにとっては一番近寄りがたい大通りであるというのだ。
カフェ・レストランの価格帯が他より高いこと、車で侵入しづらい、催し物が多くて騒音が気になる、というのが大きな理由だそうだ。
パリ市は5月、そんなシャンゼリゼ大通りを大改造する新プロジェクトを発表した。
シャンゼリゼはパリの象徴であるにもかかわらず、ここでパリジャンを見かけることはほとんどない…という観察から生まれたこの一大計画。
シャンゼリゼ大通りを観光地化せず、消費に重点を置かない“出会いの場”に変えたいというパリ市の野望があるとのことだ。
改造は2段階に分かれて行われる。
まずはオリンピックイヤーである2024年をめどとする第1期工事。
現在パリでは、世界に姿をさらす前にその美を取り戻そうと、あちこちで改修工事がなされている。
シャンゼリゼ大通りはその中でも一番大掛かりだ。舗装、歩道の拡張、商業施設の改装、約400本の新しい木の植樹、テラス席・ベンチの増加、エトワール広場の自動車専用スペースの縮小などが予定されている。
またシャンゼリゼ大通りの起点であり、パリ最大の広場であるコンコルド広場も新たに緑地として生まれ変わる。
ちなみにコンコルド広場は、2024年パラリンピックの開会式会場となることが先日決まったばかりだ。
全体的に緑とテラス席を大幅に増やし、ショッピング以外でも訪れやすい雰囲気づくりを目指しているという。
しかしシャンゼリゼ通りの本当の「変身」は、2024年のオリンピック後に行われる第2期工事で行われる。
4車線から2車線へ減らす車線数の変更、空気の質を向上させる「木のトンネル」の設置など大規模な改造が明らかになっており、さらには冬のアイススケート場や夏の簡易プールの設置も検討されている。
予算は合計で2億5,000万ユーロ(約315億1,800万円)にも上るというから、パリ市の本気度がここでもうかがえる。
シャンゼリゼ通りを歩くのは一日にして10万人にも及ぶ。
しかしそのうち72%が観光客で、22%が周辺で働く人だという。
家賃が高すぎて大通り沿いに住む人がおらず、そのほとんどがテナントであるためだ。
今回の大改造により、シャンゼリゼ大通りがパリジャンにとって気軽に足を運べる場所になることが期待されるが、観光客にとってもさらに魅力的な土地となりそうだ。
パリはこれまで、「緑が少ない街」とのレッテルを貼られてきた。
しかし今パリで進んでいるのは、オリンピックをきっかけとした緑化への“お化粧直し”だ。
シャンゼリゼ大通りのほかには、エッフェル塔やセーヌ川周辺でもどんどん整備が進んでいる。
お金にシビアなパリジャンが、「今日はシャンゼリゼで一杯やろう」という日が本当にやってくるかどうかは分からない。いずれにしてもパリは近い将来、間違いなく緑豊かな街に生まれ変わる。(せ)