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パリ最新情報「1923年から遊泳禁止のセーヌ川が生まれ変わる!? 泳いで訴える水泳選手」 Posted on 2021/11/26 Design Stories
1923年からセーヌ川は水質汚染のため遊泳禁止だが、パリのイダルゴ市長は、2024年のオリンピック開催までには川を綺麗にし、1世紀ぶりに泳げるようにしたいと考えている。実はこの試みは、1990年、当時のパリ市長、後のフランス大統領ジャック・シラクも、目指していたものだ。「3年後には、セーヌ川が綺麗になったことを証明するために泳いでみせる」という発言は、結局、実現することはなかった。そもそも、水質汚染の最大の理由は、川に捨てられるゴミ以上に、河沿いに建つ施設や住宅から排出される汚水が、川に流れ込んでしまっているという状況がある。
この叶わなかった想いは、イダルゴ市長に引き継がれたのだが、この宣言に先駆けて、注目されたのがイダルゴ市長の19歳の息子で、水泳選手のアーサー・ジェルマン。2021年6月6日にスルス=セーヌ(Source-Seine:セーヌの水源)から出発し、セーヌ川の河口であるル・アーヴルまでの784kmを49日間かけ、単独で泳ぎきった。テントとハンモックに小さなコンロ、そして、それらを積み込んだカヤックを伴っての挑戦だった。
(アーサー・ジェルマンの公式サイトよりhttps://openwaterexperience.wordpress.com/)
(アーサー・ジェルマンのインスタグラムよりhttps://www.instagram.com/arthur.germain/)
水源からの30kmは泳げるほどの水がなく、120kgのカヤックを引きながら歩いたそうで、それが一番大変だったと、ouest france紙で語っていた。また、セーヌ川は汚染が進んでいるので、定期的な体調確認に医師が立ち会い、5キロごとに水中のバクテリアの量を測定するため、サンプルを採集したそう。パリを通過した際は、母であるイダルゴ市長も駆けつけ、「息子が夢を成し遂げる姿をみれて嬉しい」とAFP通信のインタビューで答えていた。
(アーサー・ジェルマンのインスタグラムよりhttps://www.instagram.com/arthur.germain/)
この挑戦の理由を自身のサイトで、「自分が泳ぐことで、人々に水質汚染への意識を持ってもらいたかったから」と綴っている。これ以前にも、「スイマーにとってのエベレスト」といわれている、フランスとイギリスの間にあるドーバー海峡を、16歳で泳いで渡ったという最年少記録を持つ。気温16度の中、10時間かけて泳ぎきり、そのときに得た支援金は、アフリカの教育機関に寄付した。
(アーサー・ジェルマンのYouTubeよりhttps://www.youtube.com/watch?v=CeZjVrNgqHY)
アーサーは4歳から水泳競技を始めたが、14歳のときに選手権大会の代表入りを逃してしまい、大会で出場する以外に、泳ぐ意義がないかと模索したそう。その答えが、ドーバー海峡や、セーヌ川への挑戦、そして社会への強いメッセージの発信だ。水泳選手として、プールの外に飛び出し、泳いで社会活動をするというアイデアは、さすが市長の息子といわざるを得ない。そんな息子の強い後押しもあってか、先のイダルゴ市長の宣言に至った。
オリンピックで、セーヌ川を舞台に繰り広げられる予定の競技は、マラソン水泳とトライアスロン。東京オリンピックでも、東京湾の水質汚染が問題視される中、決行された2競技だ。イダルゴ市長は、これまでにもパリ市の大気汚染改善のため車両立ち入りの制限など、環境問題に対して強い方針を打ち出してきた。そして、2022年4月に予定されている大統領選への出馬を表明。シラク元大統領も叶えられなかった、セーヌ川での遊泳を実現し、初の女性大統領になるのか注目だ。(ウ)