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パリ最新情報「フランスの中学校でスマホ持ち込みが全面禁止に。25年9月から、学業に集中へ」 Posted on 2025/04/15 Design Stories  

 
4月9日、フランスのボルヌ教育大臣は、2025年9月からすべての中学校で、スマートフォンの持ち込みを全面的に禁止する方針を正式に発表した。この新たなルールのもとでは、登校中の生徒は電源を切るのではなく、スマートフォンを自宅またはロッカーに置いておく必要がある。目的は、生徒の集中力と学校環境、とくにSNSがらみの問題を改善するためだという。
 

パリ最新情報「フランスの中学校でスマホ持ち込みが全面禁止に。25年9月から、学業に集中へ」



 
近年、フランス政府は学校におけるスマートフォンの問題に、これまで以上に力を入れているようだ。実際、2024年にはフランス全国180の中学校で「デジタル断ち」と題した試験的な取り組みが行われ、生徒は登校時にスマートフォンを学校の入口にあるロッカーに預け、放課後に受け取るという形式が採用されていた。これが好評だったということで、2025年9月からは全国すべての中学校でスマートフォンの持ち込みが全面的に禁止される。
フランスではこれまで、生徒たちは電源を切ることを条件にスマートフォンの持ち込みが認められていたが、今後は自宅または学校のロッカーに預けるか、専用の袋に入れて管理される形に変更される。なお、フランスではすでに2018年から、保育園、小学校、中学校でのスマートフォンの使用が原則として禁止されており、今回の措置はその方針をさらに厳格化する動きといえる。

スマートフォン持ち込みの全面的な禁止にあたり、ボルヌ教育大臣(フランスの前首相)は、「子どもたちはできるだけ多くの時間を読書に費やすべきです」と語っている。また、「直接の対話」で生徒同士や教師とのコミュニケーションがもっとスムーズになり、SNSへのアクセスが制限されることで、いじめの抑止にもつながる可能性があると説明している。
 



パリ最新情報「フランスの中学校でスマホ持ち込みが全面禁止に。25年9月から、学業に集中へ」

 
たしかにフランスでも、スマートフォンをめぐる生徒間のトラブルは多い。日本との違いとして挙げられるのは、(一部の学校だが)スマートフォンの盗難や恐喝事件が比較的多く発生していることだろうか。未成年のトラブルが少なくないフランスの現状を考えると、日本よりも厳しい対策が講じられるのも無理はない。
9月からの禁止措置がそうした問題の抑止力になればよいのだが、一方でフランスでは、中学校側・先生たちの負担が大きくなる可能性も示唆されている。かつてあったようなカバンの抜き打ち検査は、現代ではほぼ不可能だ。今は生徒の許可を得た上で、先生たちがカバンを目視で確認することしかできないのだという。生徒たちが本当にスマホを所持していないか、そしてこの禁止措置がどこまで効力を発揮するかは、実際に制度が始まってからでなければ判断が難しいだろう。
 



 
とはいえ、保護者やフランス社会全体では、今回の禁止措置が非常に好意的に受け止められている。未成年の事件がときに社会問題にも発展するフランスでは、制服の導入が決定したときと同じように「安心感につながる」という声が多い。とくにスマホ利用に関しては、大人も「自主的な」電源オフが勧められている現代。学校単位ではなく、国レベルの教育課題としてスマートフォンの問題を扱うことに、多くの人が賛成している。

今回は中学校のみで禁止措置が導入されるが、今後の動向によってはさらに試行錯誤が続くことになるかもしれない。今年9月以降の状況を踏まえつつ、その後どうなったのかについても、今後あらためてお伝えしていきたい。(大)
 

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