欧州最新情報

パリ最新情報「フランスで一番愛されるサンドイッチ『ジャンボン・ブゥール』の秘密」 Posted on 2025/03/06 Design Stories  

 
「フランス人がもっとも愛するサンドイッチは?」 この問いに対して、毎年変わらずトップに君臨するサンドイッチがある。ジャンボン・ブゥール(jambon-beurre)と呼ばれるシンプルなサンドイッチだ。2025年3月はじめには、米タイムアウト誌が選ぶ「世界でもっともおいしいサンドイッチ」の一位にも輝いている。
 

パリ最新情報「フランスで一番愛されるサンドイッチ『ジャンボン・ブゥール』の秘密」

※選ばれたのはパリ2区にあるビストロ「ル・プティ・ヴァンドーム」のジャンボン・ブゥール。Le Petit Vendôme Instagramより



 
ジャンボン・ブゥールに必要なのは、バゲットと加熱済みのハム、そしてバターの3つだけ。どれもフランスを代表する食材なので、街のパン屋に行けば必ず手に入るし、家でさっと作ることもできる。
簡単でシンプル、慣れ親しんだ味で何よりもおいしいジャンボン・ブゥール。日本のおにぎりと同じように、外出先で食べられる手軽さも多くの人に選ばれる理由だ。
 

パリ最新情報「フランスで一番愛されるサンドイッチ『ジャンボン・ブゥール』の秘密」

※パン屋に並ぶバゲットサンドイッチの数々



 
ランチの選択肢がたくさんある現在でも、ジャンボン・ブゥールの人気は揺らぐことがない。年間の販売数は、フランス全土でなんと8億個以上。食べるタイミングとしては「ランチ」が圧倒的だが、もう少し春めいてくると、公園やセーヌ川沿いで広がるピクニックのお供としても、ジャンボン・ブゥールの出番がぐんと増える。

そんなジャンボン・ブゥールは、実は「パリジャン」という別名を持っている。「パリジャン」がフランスの国民食として広がったのは、19世紀のこと。当時はランチの時間がとても短かったため、労働者たちは手軽で栄養価の高い食事を求めていたのだそう。
そんなニーズに応える形で、パリの市場が生み出したのがジャンボン・ブゥール。経済的で、シンプルなのにしっかりお腹を満たしてくれるこのサンドイッチは、あっという間にパリからフランス各地へと広がっていった。また、材料の白ハムが「ジャンボン・ド・パリ(Jambon de Paris)」と呼ばれていることも「パリジャン」という名に関係しているのだとか。
 

パリ最新情報「フランスで一番愛されるサンドイッチ『ジャンボン・ブゥール』の秘密」

※お手頃なパン屋のランチメニュー。バゲットサンドイッチ、ドリンク、デザートのセットで7,60ユーロ(約1200円)は嬉しい



 
ジャンボン・ブゥールは、「もう少しいろいろな具材がほしい」という人のためにアレンジされることがある。もっとも多いのは、エメンタールチーズやレタス、トマトが入ったバランス型のジャンボン・ブゥールだろうか。さらに、野菜やチーズは入れずに、ピクルスだけをたくさん加えるクラシックなタイプもある(フランスではピクルスが欠かせない!)。いずれもサイズが大きいので、サンドイッチとは思えない満足感が味わえる。
 

パリ最新情報「フランスで一番愛されるサンドイッチ『ジャンボン・ブゥール』の秘密」

※エメンタールチーズやレタス、トマトが入ったバゲットサンドイッチ

 
どのパン屋でも買えること、平均価格が3ユーロ(約480円)前後と経済的なこと、材料が複雑でないこと、あらゆる世代に好まれる変わらない味。ジャンボン・ブゥールが選ばれ続けてきた理由は、このようにたくさんある。

ランチ時になれば、パン屋の前にバゲットサンドイッチを求めてたくさんの人が集まるフランスだ。その列には、警察官や配達ドライバー、工事現場で働く人たちの姿もあれば、学生や観光客の姿も混じっている。ランチタイムに限らず、フランス人にとって「ふと無性に食べたくなるもの」の一つが、このジャンボン・ブゥールなのだろう!(ち)
 

自分流×帝京大学