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パリ最新情報「フランスのカフェとビストロ、国の無形文化遺産に登録へ! 人々の生活に欠かせない場所として」 Posted on 2024/10/19 Design Stories  

 
2024年9月末、「フランスのカフェとビストロ、およびその社会的・文化的慣習」が国の無形文化遺産に登録されることが決まった。
これは、カフェやビストロが単なる食事スポットではなく、フランスの文化と日常生活の中心であり、“地域のつながりや友情を育む場所”として機能していることを示すもの。
今回はフランス国内の登録だったが、パリのレストラン協会によれば、将来的にユネスコ無形文化遺産への正式登録を目指しているという。
 

パリ最新情報「フランスのカフェとビストロ、国の無形文化遺産に登録へ! 人々の生活に欠かせない場所として」



 
フランス国内にはすでに、ユネスコ無形文化遺産リストに登録された多くの文化的要素がある。フランス料理やバゲット、ワインの製造・収穫祭、チーズの製法などだ。
こうした伝統が国際的に認められることで、フランスの文化的アイデンティティが一層強固なものになっている。

今回のカフェ・ビストロ文化も、ユネスコへの登録を目指しているわけだが、注目すべきはこれが「人々の交流の場所」として認められたことだろう。
パリ・レストラン協会のアラン・フォンテーヌ会長はこのように語る。
「カフェ・ビストロは、人々が自由にお喋りをする場所です。くだらないことでも、深刻なことでも、好きなように話していい。必ずしも知り合いでなくてもいい。ここには、さまざまな背景を持つ客たちがいる。数年前にカフェで知り合って、今では友人となり、一緒に休暇に出かけるという人もいる」
 

パリ最新情報「フランスのカフェとビストロ、国の無形文化遺産に登録へ! 人々の生活に欠かせない場所として」



 
確かに、フランスのカフェ・ビストロには、他国にはない独特でフレンドリーな雰囲気があると思う。そこには常に人間のあたたかさがあり、働く人も顧客もすべて「対等」だという印象を受ける。
たとえばパリのカフェでは、給仕さんと顧客が冗談を言いあう姿をよく見かける。こうした飾らない雰囲気、そして人々に「また寄りたい」と思わせる引力があることが、フランスのカフェ・ビストロの魅力であり特徴だと言えるだろう。
 

パリ最新情報「フランスのカフェとビストロ、国の無形文化遺産に登録へ! 人々の生活に欠かせない場所として」



 
ただ、カフェ・ビストロが国の無形文化遺産に推薦された背景には、その衰退を懸念する声があったという。
1960年代のフランスには、20万軒近くのカフェとビストロが存在していた。しかし時代の変化、経済活動の変化、パンデミックなどの影響により、現在では4万軒弱しか残っていない。
特にパンデミックの影響は大きく、2000年から2023年の間には、パリのビストロの20%以上が失われてしまった。現在では観光客向けのチェーン店や、若い世代向けのコーヒーショップなどが首都パリを座巻している。
 

パリ最新情報「フランスのカフェとビストロ、国の無形文化遺産に登録へ! 人々の生活に欠かせない場所として」



 
フランス文化省とパリ・レストラン協会は、カフェ・ビストロを無形文化遺産として認定することで、それらの保護と再生を目指している。
近い将来、正式にユネスコ無形文化遺産に登録されるとなれば、保護だけでなく次世代への教育や継承もマスト事項になるという。

こうして、日常生活の一部であり続けているフランスのカフェ・ビストロ文化。今回は地元フランス人も、国の無形文化遺産への登録を歓迎しているそうだ。
次、ユネスコの正式登録までには多くのステップを踏まなければならないというが、バゲットに続き、フランスのカフェ・ビストロ文化が世界的な無形文化遺産として認められることを願いたい。(オ)
 

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