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パリ最新情報「パリ市役所前に数百人の難民が集結、オリンピックを控え一時騒然に」 Posted on 2023/08/25 Design Stories
8月上旬から約3週間にわたって、パリ市役所前に数百人の難民が寝泊りするという事態が起きた。
難民は主にコートジボワール、マリ、セネガルといったアフリカ出身の人々で、地中海経由でフランスに辿り着いたばかりだったという。
地下鉄、パリ市役所前(Hôtel de Ville)から地上に出ると、ゴミや段ボール、寝具の散乱する光景が目の前に広がっていた。
市役所前の広場では旅行者がスマートフォンを取り出して、市庁舎前に掲げられた五輪のオブジェを撮影する。
その一方、背後では100人を優に超える難民たちが段ボールの上に横たわり、雨や暑さをしのいでいる。
どちらも目を背けられない、パリの現実だ。
難民たちはアフリカから危険を冒しはるばるパリにやってきたというが、その多くは幼い子どもを持つ若い女性か、18歳以下の未成年だということだ。
しかしこれはフランスの移民保護団体、「ユートピア56(Utopia 56)」が主導した作戦でもあった。
団体は難民たちに「屋根がある場所」を提供しようと、人目につくパリ市役所前に集まることを選んだ。
団体のボランティアは同時にそこで毎日、食事や赤ちゃん用のおむつを難民たちに配布する。
今回の集まりはデモ的に行われた作戦だったが、メディアで大きく取り上げられたこともあり、結果難民たちは8月22日に全員が市内・市外の施設に無事移された。
保護された難民は合計で226人、移動はパリ市とイル・ド・フランス(パリ首都圏)双方の関係者によって大がかりに行われた。
このような問題は初めてではない。
しかし増える難民問題、対応の遅れに対しては、パリ副市長は今回、「この分野における国の資金不足」と直接的にフランス政府を批判した。
また、この度の難民作戦はパリでも大きな論争を引き起こし、野党関係者や住民たちは、「オリンピックを1年後に控えたパリのイメージを損なう状況だ」と非難している。
8月中旬にはSNS上でも、「パリ市はオリンピックに向けて準備万端だ」などと皮肉が飛び交う事態になっていた。
フランスにやってきた難民たちは一般的に、仏内務省と住宅を有する自治体によって運営される宿泊施設で保護を受ける。
保護された人々は同意のもと、フランス政府から一時的に社会的・健康的なサポートを受けられる。
なおパリ警察当局によると、パリ市では今年すでに合計3783人の難民が保護されたということだ。(内)