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パリ最新情報「市民による生きた意見、パリの改善点とは?『パリでよりよく暮らすために』アンケート」 Posted on 2023/02/18 Design Stories
パリ市は今、公共政策に住民の意見を積極的に取り入れようとしている。
昨年秋には、「パリでよりよく暮らすには?」という問いのもと、市民向けの大規模なアンケートも呼びかけられていた。
これはパリ市役所が用意したオンラインアンケートで、パリの改善点・問題点を市民のリアルな声により明らかにする、というのが目的だった。
2月15日にはその結果が発表されたのだが、参加者は114,911人、アイデアの合計数では10,160件が寄せられ、大反響のうちに終わったということだ。
そしてパリ市役所は今回、結果を18項目に分類し、「パリジャン・パリジェンヌをひとつにする優先事項」としてその内容を以下にまとめている。
なお、ここでは優先順位の高いもの(すぐにでも改善すべき点)から述べている。
・自転車、電動キックボードの安全性を向上させる。
・公共交通機関の質の向上。本数と頻度を増やし、乗り継ぎ用の切符を一枚にまとめる。
・自動車による騒音公害をなくす。クラクションやサイレンを時間帯によって規制する。
・パリの街角に無料または低料金の駐輪場を増設する。
・公共スペースの植栽を増やす。
・清掃サービスを強化する。街の清潔さを保ち、ネズミ駆除政策を実施する。(フランスでは今ネズミが急増している)
・ゴミのポイ捨てをなくす。
・照明と電光掲示板は夜間のみ今後ずっと消灯する。
・騒音公害を避けるため、工事や建設現場の情報開示を求める。
・伝統的な建築物を保護し、遺産と都市景観の一貫性を保証する。
・公衆トイレを増やし、改善する。
・公共・民間の屋根にソーラーパネルを設置する。
・女性に対するストリートハラスメントなどの不安と闘うために、警察の存在を強化する。
・建物を改修し断熱効果を高める。
・あらゆる障がい者にとって公共スペースがより利用しやすくなるようにする。
・路上生活者へ安全な宿泊施設を提供する。
・地元の商店街を守る。地産地消を活性化し、低コストのテナントを提供する。
・リサイクル事業を発展させる。リサイクルボックス、コンポスター、修理工場を増やし、リサイクルに関する情報をさらに提供する。
パリ市第一副市長のエマニュエル・グレゴワール氏は、「パリはパンデミック以来、ストレスを生み出し続けている」とまず分析した上で、「パリ市民との対話は非常に有益なだけでなく、これからのパリの方向性を決定する一助となるだろう」としている。
実際に今回の意見で最も多かったキックボード関連の問題も、これからパリ市は市民の投票によって決定しようとしている。※正確にはパリ市における電動キックボードのレンタル可否問題、4月2日投票。
ということでパリ市は今後、「公共政策の指針」に市民の意見をどんどん取り入れることになりそうだ。
なお、上がった18項目の中にはすでに解決策が提示された案件もある。
例えば2024年以降、パリ市内にある435の公衆トイレが交換される予定であったり、2021年以降に古い住宅の断熱改修工事を行う所有者は、固定資産税が100%免除される、などだ。
このように行政と住民との間に公平な対話を設けることで、「2023年は“参加型民主主義”のターニングポイントになるだろう」、とパリ市は述べている。
一方でパリ市民の反応は大変良いというが、「対話だけでなく誠実で素早いアクションを望む」と考える人たちがほとんどを占めているようだ。(内)