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パリ最新情報「マクロン大統領、HPV予防接種キャンペーンを発表。小学5年生を対象に Posted on 2023/03/02 Design Stories
フランスでは、子宮頸がんおよびHPV(ヒトパピローマウイルス)感染者の数が年々増加している。
現在、HPVの予防接種は世界各地で実施されているが、フランスでの接種率は15歳までの女子で45%、男子では6%に留まっているということだ。
仏政府は2030年にはこれを男女ともに80%まで上昇させたいとしている。
政策の一環として、マクロン大統領は28日に、小学5年生を対象とした無料のワクチン接種キャンペーンを新学期(2023年9月)から導入することを発表した。
マクロン大統領とフランソワ・ブラウン保健大臣の両氏は、「今回の目的はHPVの根絶であり、この無料ワクチン接種キャンペーンにより多くのがんを予防することができる」と声明を出している。
フランスにおけるHPV感染者は年間約3万件、6,000人以上の新たながん患者の原因となっており、そのうち約1000人が命を落とすと言われている。
仏衛生局(Santé Publique France)によれば、このワクチンの一般化により子宮頸がんの患者数は90%近くの減少が期待でき、前がん病変の数も効果的に減少するのだという。
しかし接種は年齢の若い女子だけでなく、男子も同時に行うことが重要だとした。
ただ仏政府はワクチンの義務化に対しては消極的で、今回はあくまで「任意」の接種になる。
希望者は親の同意が必須であり、11歳以上の子どもたちに限る。
さらにこの予防接種を簡易化するため、フランスの薬剤師、助産師、看護師は今年の9月からワクチンの処方と注射の両方を行うことができるようになる。(フランスでは薬局等でワクチンを自分で購入する必要がある。注射を行うのは以前は医師・薬剤師のみだった)
ヒトパピローマウイルスは世界中に見られる一般的なウィルスで、ほとんどの場合は感染後1年以内に体内から自然に排除されるという。
しかし感染が慢性化すれば、前がん病変が出現しそれが進行して子宮頚がんに至るケースもある。
フランスでは先述したように、毎年6,000人以上のがんがHPV感染に起因している。
そのほとんどは子宮頸がん(約1,000人が死亡)だが、少ないところでは中咽頭がん、肛門がん、腟がんなどの原因にも繋がっているそうだ。
マクロン大統領はまた、「フランスはヨーロッパで最もHPV予防接種率が低い国です」と指摘した。
一方でフィンランド、スウェーデン、ハンガリー、ノルウェー、スペイン、イギリスでは、10代女子の70%以上が実際に予防接種を受けているという結果も出ている。
過去のフランスでは2007年から女子を対象に、2021年1月1日からは男子にHPVのワクチン接種が推奨されていた。
合計接種回数は日本と同じく3回で、11歳から14歳の間に2回、そして15歳から19歳の間に3回目の接種が推奨されている。
ただフランスで過去のワクチン接種率が低い理由として、95〜116ユーロ(約13000円〜16240円)のワクチン費用がネックだったとされている。
費用の65%はフランスの健康保険制度でカバーされるが、金額は前払い制度のため、貧困層でのワクチン接種率がやはり低いのだという。
またフランスの複雑な医療予約システムも積極的なワクチン接種を妨げてしまっていた。
新学期から始まる無料ワクチンキャンペーンでは、こうした諸々の問題を改善し、接種率の大幅な上昇が期待されている。(内)