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パリ最新情報「ハーブの専門店、パリのエルボリストリ」 Posted on 2022/02/03 Design Stories
「エルボリストリ」という言葉をご存知だろうか。
これは、ハーブ専門の薬草店のことで、フランスには人々が不調を感じた時に訪れるエルボリストリ(Herboristerie)という店が存在する。
普通の薬局と異なるのは、お薬を処方するのではなく、薬草の知識を持った専門家が症状に合わせて薬草を調合してくれる「ハーブ療法」のお店であること。
なんとなく調子が悪いのだけど、病院に行くまでもない…といった症状を抱えている時、フランスの人々はエルボリストリでお世話になることがある。
オペラ座から歩いて10分ほどのところにあるエルボリストリ・デュ・パレロワイヤルは、そんなハーブを専門に扱う老舗店だ。
創業は1904年。
現代の薬が広まるずっと前から、ここは皆の「健康相談所」のような役割を果たしてきた。
店内にはハーブや精油、オーガニックコスメなど、植物由来のアイテムがずらり。
知識豊富なスタッフさんたちが丁寧にお客様の意見を聞いていく。
フランス産のものに限らず、世界各地に生息する植物を揃えていて、訪れる人の目的は体質改善や美容のためなどさまざまだという。
ただ、1941年には薬の発展によって、フランス政府から薬草専門家「エルボリスト」という職業が廃止されてしまった。
現在でも資格として認められていないのだが、それでもオーガニックや植物療法を好むフランス人からの人気は絶えず続いており、エルボリストリはパリに数店舗あるとのこと。
ハーブは、フランスの人々にとって本当に身近なものである。
まず料理によく使われていて、フランスのママンたちはベランダで栽培したローズマリーをその場でプチプチとカットしてローストチキンに添えたりする。
スーパーのティザン(tisane=ハーブティー)コーナーは特大で、サロン・ド・テには種類豊富なハーブティーのメニューがある。
産婦人科を受診した時にも「ハーブティーを飲んで身体を温めて」、とアドバイスをもらったほどだった。
中世の時代から修道院で薬草を栽培し、効能についての知識を修道院間で分かち合っていたというハーブ。
職業として認められなくなっても、その歴史と伝統は今もフランスで大切に受け継がれている。
そして、エルボリストリ・デュ・パレロワイヤルは丁寧なカウンセリングを受けられることでも有名である。
スタッフさんたちはその症状に応じて、ハーブティーやサプリメント、アロマオイルなどを提案するほか、場合によってはその場でハーブをブレンドしてくれる。
個人的な話で恐縮なのだが、私は食べることが大好きなのに、年齢のためかフランス料理で時々消化不良を起こしてしまう。
そのような悩みを伝えたところ、通院はしたことがあるのか、具体的に何を食べた時にそうなるのか、時間帯は、どのくらいの頻度か、、、と症状にじっくり向き合ってくれた。
カウンセリングを通してすぐにピタリと合うハーブをおすすめしてもらい、そのスピーディーさと知識の豊富さには驚くばかり。
エルボリストリが地元のお客さんたちから信頼を得ている理由が、よく理解できた。
今、古くから続くエルボリストリの存在や伝統的なハーブ療法が、健康志向の上昇とともに見直されてきている。
ハーブティーのイメージは「リラックスするための飲み物」であることが多い。
しかし、本来のハーブ療法は、体の状態に応じて適した薬草を選び、乱れてしまったバランスを整えながら健康を保つというのが主な目的だ。
肩こり、更年期障害、不眠、冷え性など、病気までいかないにしても、ある程度の不調は誰にでも起こり得る。
病院で本格的にお世話になる前に自身の身体を見直し、セルフケアを充実させていく…
ナチュラル派が圧倒的に多いフランスにあって、エルボリストリは再び輝きだした。
もうすぐ本格的な春が訪れるので、ハーブを取り入れながら、今のうちに寒暖差にやられない身体作りをしたいと思った。(内)