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パリ最新情報「フランスに記録的な熱波襲来。各地で40度越え、山火事も相次ぐ」 Posted on 2022/07/19 Design Stories
フランスでは7月半ばより、再び強烈な熱波が到来している。
前回は6月に季節外れの猛暑が訪れたが2日ほどで気温は下がり、その後しばらくは過ごしやすい気候が続いていた。
今回の熱波はそれと異なり、7月18日、19日を山場として合計で数週間ほど続く見込みだという。
18日月曜日が暑さのピークとなり、パリでは39℃、フランスの大西洋側では15の県に40℃を越す「熱波警報」が発令されている。
湿度が低いと言えど、気温40度はおよそ暴力的な暑さである。
アスファルトの照り返しは酷く、直射日光には5分も当たっていられない。
額はおろか、手指の隙間からも汗が滲んでくるほどだ。
フランスの住宅にはエアコンが備わっていないため、近頃では多くの家庭がボレ(雨戸)を完全に締めきり熱風を遮断している。
無駄な外出は控え、扇風機に当たり水分を補給しながら日暮れまで静かに過ごす、というのが一般的な対処法となっている。
ところが今回の熱波はフランスだけでなく、ヨーロッパの各地でも記録を更新しているようだ。
高温に乾燥した気候が重なったことで山火事も相次いでいる。
フランス大西洋側のジロンド地方では大規模な山火事が発生しており、6日間で約14,300ヘクタールが燃える大惨事となっている。
避難した住民はおよそ16,200人にも達し、連日約1,200人の消防士が消火に当たっているという。
地元消防局によれば、18日月曜日は高温に加え強風が懸念されており、消火活動に用いられる小型飛行機の数も不足しているとのことだ。
幸い犠牲者はいないとのことだが、懸命な消火作業は今現在も続いている。
2022年夏のフランスでは、3週間足らずの間に二度も40℃越えの熱波が発生している。
相次ぐ異常気象に対し、仏気象学者のロベール・ヴォータール氏は熱波の「頻度」「強度」「長さ」がフランス国内で増していると語る。
また同氏は17日のテレビ番組franceinfoに出演し、「今後10年のうちにフランスで50度を記録する可能性が十分にある」と述べた。
理由には例外なく地球温暖化の影響があり、西欧の夏の平均気温は20世紀初頭に比べて少なくとも1.5〜3度は上がっているという。
なお、パリ市が昨年発表した研究「気候変動に直面するパリ」によれば、2010年に年間14日だった猛暑日(30℃以上)が、2085年には34日以上になるとのことだ。
熱帯夜(気温が20度以下にならない夜)の日数は2030年までに3倍に増加する可能性があり、今後10年のうちには生活水の使用量に緊張が走る可能性もあるという。
このような最悪の事態に備えるため、パリ理事会は7月5日、全会一致で気候に関する初の組織である「Paris à 50 °C(50℃のパリ)」を設置することを決定した。
主には緑化や植樹、市内各所に水場「オアシス」の設置を急ぐこと、電力の節約、50℃のパリを模した危機管理訓練などが予定されている。
パリ市によれば、この計画は当初2022年10月に発足する予定だったが、今年6月の熱波を受け決断が早まったという。
避暑地に逃れられない富裕層以外の人々を、気候変動の影響から守る目的もあるとのことだ。
現在、パリ市は公園や水汲み場を夜遅くまで解放し、 路上生活者に水のペットボトルを配るなど熱中症対策にあの手この手を打っている。
仏メディアも連日のように注意喚起を行っており、「定期的に水分を補給し、スポーツは控えましょう。食事は十分にとり、お酒は飲まない。日中はシャッターを閉めて、涼しく過ごすこと。自宅が暑い場合は映画館、美術館、図書館、スーパーマーケットなどに避難し、可能であればテレワークより冷房の効いたオフィスに出勤を。家族と密な連絡を取りましょう」
と、今までのフランスでは考えられなかったようなアナウンスが続いている。(オ)