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パリ最新情報「毎年恒例、パリ市から贈られる、新年のささやかな「ご挨拶」を紹介」 Posted on 2025/01/04 Design Stories  

 
フランスの正月は日本に比べ、短い。年末年始休暇の期間は人によって異なるものの、カレンダー通りに働く場合は、1月2日がフランスの「仕事始め」となる。
とはいえ、クリスマスのデコレーションが年明けの今でも残っているフランス。これらは1月のエピファニー(公現祭)ごろまで飾られるというから、フランスにおける正月はやはり、クリスマス祝祭の延長にあると言えるかもしれない。
 

パリ最新情報「毎年恒例、パリ市から贈られる、新年のささやかな「ご挨拶」を紹介」

※1月2日、パリの様子



 
一方で、首都パリには新年恒例の、ささやかな「挨拶」があることをご存じだろうか。シャンゼリゼ大通りのカウントダウンや花火に比べれば、話題性はたしかに少ない。ただ、パリ市が毎年発表する「年始のグリーティングカード」には、その年のパリを象徴するような出来事が描かれている。
写真やイラストで表されるそれは、高さ3メートルほどの、いわゆる“広告パネル”だ。存在感も薄く、見過ごしてしまいそうなパネルだが、パリの「今」を知るにはとても良い素材だと言えるだろう。
 

パリ最新情報「毎年恒例、パリ市から贈られる、新年のささやかな「ご挨拶」を紹介」

 
たとえば2023年には、前年に逝去したフランスの漫画家、ジャン=ジャック・サンペ氏のイラストを使ったパネルが登場した。サンペ氏はフランスで広く知られる漫画家であり、成功を収めた後も、愛する街パリのスケッチを描き続けたという。
パリ市はそんな彼への敬意を表すとともに、パリジャンへの励ましのメッセージとして、サンペ氏の作品を「グリーティングカード」に選んだ。
 



パリ最新情報「毎年恒例、パリ市から贈られる、新年のささやかな「ご挨拶」を紹介」

※新年のグリーティングカード、2024年の例(ActuaLitté official X)
https://x.com/actualitte/status/1741074152985874469?s=51

 
翌2024年には、同じくフランスで人気の漫画家、リアド・サトゥフ氏のイラストが登場した。夕暮れとも夜明けとも取れるパリの風景は、パリ2024大会の成功を願って描かれたもの。パリ市のグリーティングカードにはこうして、アートと時事的なテーマを組み合わせたデザインが多く見られる。
 



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※2025年の例

 
さて、2025年はこれまでとは打って変わり、モノクロの写真が登場している。ブラジル出身で、パリとも縁が深いフォトジャーナリスト、セバスチャン・サルガド氏の作品だ。「自然を前にした都市の変貌」がテーマになっている。
実際、2025年のパリでは、このテーマ通り「緑化」がさらに進む予定である。オリンピックの開催という大役を果たしたアンヌ・イダルゴ現市長も、2026年でその務めを終了するという。
環境に配慮した大胆な改革を進める一方で、批判の的となることが多かったイダルゴ市長。市政を率いる最後の年に選んだ作品は、まさに彼女らしい選択だと言える。
 

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※1月2日、パリの様子



 
こうしてささやかに贈られる年始のグリーティングカードは、パリ市内の至るところに1月下旬まで設置される。
ただ、パリ市民にとっては「それより休みがもっと欲しい」と思うのが本音かもしれない。1月1日の朝方には、大晦日にパーティーを楽しんだ若者たちが余ったビールを手に帰宅する姿も見られた。翌日には仕事始めを迎えるわけだから、フランスの年末年始は日本よりも駆け足で過ぎ去っていくという印象を抱く。もちろん、それに応えるだけの体力も必要だ。
 

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※2024年の名残を留めているのもフランスらしい

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※12月7日に再開したノートルダム大聖堂には、一日約3万人もの人々が訪れているという

 
2024年のパリでは、オリンピック・パラリンピックの開催と、ノートルダム大聖堂の再開という特大級のイベントがあった。2025年には、これほど大きな行事は予定されていないが、まずは街の安全と平和を祈りつつ、五輪後の変わりゆくパリを見守っていきたい。(大)
 

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